「頼むからゴールにいてくれと批判された」。FKも蹴ったチラベルトが語るGK像の変化

  • 栗田シメイ●文 text by Kurita Shimei

 懐かしの名手への取材機会に恵まれた。元パラグアイ代表GKのルイス・チラベルト、55歳。

 現役時代は堅守を誇る一方で、FKやPKの名手として得点も重ねた。1998年にはGK史上初となるハットトリックを記録(すべてPK)するなど、代表のゴールを含めて通算67得点を記録。型破りなプレースタイルで人気を集めただけでなく、3度の世界最優秀GKに輝いた偉大なる守護神だった。

 2004年にスパイクを脱いだが、第二の人生でもボランティア活動などを経て、2023年に予定されている大統領選出馬にも意欲を見せるなど精力的に活動を続けている。記憶にも記録にも残るパラグアイの英雄に、現役時代の印象深いエピソードと変化していったGKの役割、現在の日本サッカーなどについて聞いた。

自ら得点を取るGKとして活躍した、元パラグアイ代表のチラベルト photo by AFLO自ら得点を取るGKとして活躍した、元パラグアイ代表のチラベルト photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る――トップレベルにおいて、公式戦だけで60点以上を記録したGKは、歴史上でもあなたとロジェリオ・セニくらいかと思います。

「今も"FKを蹴るGK"として、人々に記憶されていることが多いと感じているよ。私はパラグアイのルケの貧困街で生まれ、スパイクはおろか、ボールすら買うお金がないほど貧乏な幼少期を過ごした。技術のベースはストリートで磨かれたんだ。ゴールを決める感覚、FKでのゴールとの距離感などは、そういった環境で身につけたんだよ。プロのチームに入ってからも、ひたすら練習を繰り返したね。そういった姿をチームメイトが見ているからこそ、信頼されてキッカーを任せてもらえたんだ」

――FKやPKを蹴ることにこだわりはありましたか?

「とにかく点を取ることが大好きだったから、GKの練習の後に、誰よりも遅くまでFKやPKの練習を欠かさずやっていたよ。精度の高いプレスキックは、私の代名詞のひとつ。批判を受けたこともあったけど、点を取りまくったことでGKとしての評価が高まった面もあると思っている。何よりも大切なのは、『もっともFKがうまいのは自分だ』と思い込むこと。そういうメンタル面の強さがなければ、GKが点を取ることはできないね」

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