「頼むからゴールにいてくれと批判された」。FKも蹴ったチラベルトが語るGK像の変化 (3ページ目)

  • 栗田シメイ●文 text by Kurita Shimei

――現在では、GKがペナルティーエリアを出て攻撃の起点となることも常識になりましたが、当時は決してそうではなかったと思います。

「アルゼンチンのサン・ロレンソでキャリアを積み、1988年にスペインのサラゴサへ移籍したことが初の欧州移籍だった。私は当時から、自陣から最短距離でゴールに結びつくよう、積極的にエリアの外に出て味方のFWへとフィードするプレースタイルだったよ。ただ、サラゴサのサポーターからは、『おいチラベル、何をしているんだ。頼むからゴールにいてくれ』と痛烈に批判されたよ。

 GKがエリア外に出ていくのは、当時は当たり前じゃなかったからね。それでも私は、『自分のスタイルが正しい』という信念を貫き通した。誰に何を言われようと、自信を持ち続けたんだ。結果的に、10を超える個人タイトルと、多くのチームトロフィーを掲げることができたよ」

――GKに必要とされる能力は、時代と共に変わってきましたね。

「マヌエル・ノイアー(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ代表)、アリソン(リヴァプール/ブラジル代表)、エデルソン(マンチェスターC/ブラジル代表)のように、足元の技術が高く、ポゼッションやロングフィードで攻撃の起点になれるGKが明らかに増えたね。クラブレベルでも、彼らのようなGKがいるチームがCLなどでも上位争いをしている。GKにも多様性が求められる時代になったという証明だろう。そういう意味で、私のことは"先駆者"と呼んでほしいね(笑)」

――現役時代に対戦した中で、もっとも嫌だったアタッカーは誰ですか?

「まず名前を挙げたいのは、デンマークのミカエル・ラウドルップだ。彼は総合力が高く、すべてのプレーで"違い"を生み出せる選手で、何度も『やられた』となった印象が強く残っているよ。それでも、一番を選ぶなら全盛期のロナウド(元ブラジル代表)だね。彼は正真正銘のフェノーメノ(ポルトガル語で「超常現象」「怪物」の意)だった。あれほどのストライカーは見たことがないよ」

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