武田修宏、岡崎慎司、リトマネン...「ごっつぁんゴール」の名手とそのスゴさ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 ゴール前で構えていたロッシが、背後から飛んできたタルデッリのシュートに、回し蹴りするようかのように右足を合わせると、ボールは勢いを加速させながら、ブラジルゴールに飛び込んでいったのだ。

 優れた動体視力は、感覚派ストライカーにとって不可欠な要素になる。ポジショニングも重要だが、それ以上に必要なのは、動いているモノに反応するスピード。ちなみにこれは、ゴール裏に陣取るカメラマンに求められる能力と同じだ。激しいアクションシーンやゴールシーンを切り取る力。ワイドレンジではなく、大きな絵柄でシューティングする力と同じだ。撮影の難易度は、本格派ストライカーの得点シーンより、感覚派ストライカーの得点シーンのほうが高いと言われる。

 明らかに動体視力に優れていた選手として、筆者の記憶に最も残るのはアヤックス、バルセロナ、リバプール等で活躍したフィンランド代表選手、ヤリ・リトマネンだ。アヤックス時代は、1トップ下ながら、1995-96シーズンにはチャンピオンズリーグで9得点を挙げ、得点王に輝く快挙を達成した。

 彼の出身地であるフィンランドのラハティに、ノルディックの世界選手権(2001年)の取材で訪れたときのことだ。

 乗車したタクシーの運転手は、筆者が普段はサッカーの取材が多いライターであることを告げると、地元出身のリトマネンについて、延々と語りかけてきた。高校時代までアイスホッケーの選手としても知られた選手で、そちらの道に進んでもスター選手になっていたであろうこと。そのリバウンドの強さと、ハンドオフのうまさはアイスホッケー仕込みであること。1995-96シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝、アヤックス対ユベントス戦で、0-1からリトマネンが決めた同点ゴールは、元アイスホッケー選手らしい得点であること......。

 ローマのオリンピコで行なわれた1995-96シーズンのCL決勝。リトマネンがマークした同点ゴールは、タクシードライバーの言うとおり、まさにアイスホッケーで鳴らした選手らしい得点だった。

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