セリエA前半戦のサプライズ。ミラン復活、ユベントス不振、ベネベント奮闘 (2ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 ピルロはボールポゼッションを重視し、名将たちのいいとこ取りをしたような「ピルロのサッカー」の完成を目指している。そのためシーズン序盤は、毎試合ごとに選手やポジションを入れ替えるなど、手探りで進んだため、格下相手に引き分けることが多かった。

 クリスティアーノ・ロナウドは15ゴールを決めて現在得点ランキングのトップに立つが、これまでに比べるとどこか凄みが薄れている気がする。左で孤立し、チームのプレーにからまないことがしばしば見受けられた。そして何より失望されたのはパウロ・ディバラだ。ケガやコロナ感染があったとはいえ、ここまでたったの2ゴールしか決めていない。ディバラが昨季の天才的なプレーを再び取り戻し、ロナウドがかつての最強戦士に戻ることが、今後のユベントスの巻き返しには欠かせないだろう。

 ロナウド、ディバラらFWはケガ人やコロナという言い訳がきくが、中盤はもっとテコ入れする必要があるだろう。ここまで一番いい結果を出しているのは若きアメリカ人のウェストン・マッケニーで、一番不調なのはミラレム・ピャニッチとの交換でバルセロナから来たアルトゥールだ。ブラジル代表のアルトゥールはスピードがなく、動きも悪く、持てる力をなかなか出せずにいる。ピルロは今後、中盤のパフォーマンスを上げるためにかなりの努力をしなければならないはずだ。

 ちなみに最終順位でミランがユベントスを上回ったのは、ミランが優勝した2010-11シーズンが最後である。

 前半戦、それ以外のチームで触れておきたいのは、かのフィリッポ・インザーギが率いるベネベントだ。昨シーズンはセリエBで2位以下を勝ち点で20近く離す圧倒的な強さを見せて昇格を決めた。その際、賢明にも大きな変革をしなかった。スターはいないが情熱と闘志ならば人一倍のチームでセリエAに臨んでいる。

 現役時代同様、ピッポ(インザーギの愛称)はとてつもなく攻撃的なサッカーを仕掛けてくる。時に守備が危機にさらされることもあるが、それでも毎試合10本以上のシュートを生み出す力はたいしたものだ。今後の課題は、これらのシュートを正確にゴールに叩き込めるエキスパートの獲得だろう。ここまでで獲得した22ポイントという数字は、リーグ後半戦、落ち着いてプレーができることを約束している。

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