「名選手、名監督にあらず」を覆したスーパースターと言えば? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 2015-2016シーズンの途中、レアル・マドリードはラファエル・ベニテス監督を解任。ジダンはその後任の座に就いて、スター選手ぞろいのチームをうまく束ね、欧州一に導いた。続く2016-2017シーズン、さらには2017-2018シーズンも、ジダンはCLを制して3連覇を飾る。

 CLが1992-1993シーズンに幕を開けて以来、連覇はこれが初。一時代を築いたチームはなかった。そういう意味では、ジダンは監督として貴重な存在になる。

 ただ、CL3連覇という偉業を、ジダンはさほど労せずして達成した印象がある。それまでに監督として築いた実績は、レアル・マドリード・カスティージャ(レアル・マドリードの下部組織)で残したものしかない。新人監督同然の立場で、欧州一の名門クラブの監督になり、その戦力によって、あっさりとCL3連覇という偉業を達成してしまった感がある。

 その後、これまたあっさりと監督の座を自ら退いてしまうが、2018-2019シーズン、ジダンの後任として指揮を執ったサンティアゴ・ソラーリ監督が成績不振で解任の憂き目に遭うと、ジダンは再びレアル・マドリードの監督の座に収まった。翌2019-2020シーズンも指揮を執り、リーグ戦こそバルセロナの失速も手伝って優勝することができたものの、CLでは決勝トーナメント1回戦で、ジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティの軍門に下った。

 おかげで、監督ジダンの評価は、CL3連覇という偉業を達成しながら、いまだ確定されていない、不思議な状況にある。監督としての欲や野望を垣間見ることができない、どこか控え目に映る珍しいタイプの監督でもあり、"名選手、名監督なり"なのか、現状では確固たる答えは出てない。

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