久保建英の先発がいつになるかを指揮官の采配と傾向から分析する (2ページ目)
しかし、図らずもこの一戦は久保の現状を象徴していた。悪くはないプレーをしているにもかかわらず、空回りしているといえばいいのだろうか。開幕後、6試合連続出場を果たしているが、すべて途中出場。合計で80分間出場は、1試合分にも満たない。
「タケ(久保)はよく(相手の攻撃に対し)フタをしていた。それは試合に備えて1週間、練習してきたことだった」
エメリ監督は、バレンシア戦後にそう語っている。
「タケとはしっかり話をしている。我々のチームの動きに対する要求度はとても高い。彼は好選手だし、進化もしている。今日(バレンシア戦)は30分プレーし、チームは得点も決めた。しかし守備の部分で、もっと働かなければならない」
エメリは守備に対し、走力と肉体的強度を求める。相手の侵入を決して許さない。入ってきた敵に対しては周りと協調し、挟み込み、せん滅する。しつこい守備をした上で、攻撃の貢献を求めているのだ。
これは是非ではない。
戦術家がファンタジスタと呼ばれる天才的攻撃センスを持った選手に、こうした要求をし、溝が生まれることはある。かつて、オランダの戦術家ルイス・ファン・ハールはリバウド、フアン・ロマン・リケルメと衝突。解任、退団にまで至った。衝突とまでいかなくても、しばしばズレは生じる。アトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネも守備の強度と規律を求める監督で、現状ではポルトガル代表ファンタジスタ、ジョアン・フェリックスのプレーを十全には引き出せていない。
結局のところ、久保がポジションをビジャレアルで得るためには、エメリの求める仕事をするしかないだろう。
左でモイ・ゴメスが重用されるのは、単純に献身性に理由がある。距離を走って、ボランチ、サイドバックと数的優位を作り、チームプレーに貢献できる。攻撃のひらめきや技術は久保に劣るが、高い集中力でいくつかのチャンスは作り、計算できるのだ。
右でサムエル・チュクウェゼが先発なのも、カウンターでのスピード、パワー、その強度によるものだろう。トップやトップ下も強さが条件。前線でディフェンスと競って、こつこつダメージを与え、ポイントになれるか。
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