2020.10.19

ハリルホジッチは日本の周回遅れを危惧。実は先見の明を持っていた

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー名将列伝
第19回 ヴァイッド・ハリルホジッチ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回は2015年から18年まで日本代表を率いたヴァイッド・ハリルホジッチ監督。現在のリバプールやバイエルンの戦術を用いる先見の明があったが、本領発揮の前に日本を去ることになった。

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<衝撃の解任劇>

 日本代表の前々監督、ヴァイッド・ハリホジッチの解任が発表されたのは2018年4月9日だった。

日本代表のあとはフランスのナントを率い、現在はモロッコ代表監督を務めるハリルホジッチ「選手たちとのコミュニケーションや信頼関係が薄れていた」

 日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長が述べた解任理由だが、ワールドカップ予選を勝ち抜き、本大会を目の前にしての解任理由としては弱い。のちにハリルホジッチが言っていたように、「信頼関係の薄れ」という程度では通常解任はされないものだ。田嶋会長の説明を聞いて、納得したファンは少なかっただろう。ほかに何か理由があるはずだとの憶測も生んだ。

 チームを維持できないほど求心力がなくなっている。そうはっきり言えばよかったのではないか。いや、それはそれでまた紛糾したかもしれないが。

 ハリルホジッチがJFAを訴えるまでの事態になったのは、欧州人と日本人の間にあった小さな差異が増幅された結果のように思える。

 ハリルホジッチとは、あるテレビ番組で長時間同席した。収録の合間にいろいろと話もしたが、物事をはっきり言う非常に正直な人物という印象だった。記者会見もそうだったし、選手のコメントを聞いても、よくも悪くもストレートな性格との印象は変わらない。

 解任されたあと、ハリルホジッチが言っていたのは「何か問題があるなら、なぜその時に言ってくれなかったのか」ということ。西野朗技術委員長も田嶋会長も「よくやってくれている」としか言っていなかったという。

 一部の選手が不満を持っているのはわかっていたと思うが、チームを率いるうえで珍しいことではない。雇用者側から何も言われていないから「問題なし」と受け取っていたわけだ。