育ってきた環境が違うからなのか。ソン・フンミンは徹底的に個で勝負 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 ソン・フンミンが小中学生のころは、まだ学校主体の育成環境だったはずだ。ソンの父親は、目先の勝敗にとらわれた育成環境に身を置くより、その年代に相応しい技術を身に着けたほうがいいと考えていたのではないか。日本でもどのチームにも所属しない選手は珍しいが、韓国でそれではエリート選別の競争から完全に脱落し、プロになる道は閉ざされてしまう。だから、おそらくソンと父親は、最初から国内は眼中になかったと考えられる。

 高校在学中にKFAの優秀選手海外留学プログラムを利用して、ハンブルガーSVのU-17カテゴリーに留学した。そこでの活躍が認められ、10年にハンブルガーSVと契約、同年10月にはブンデスリーガでのデビューを果たしている。

 高校までチームに所属せず、父とのトレーニングに明け暮れたというと、まるで漫画『巨人の星』の星飛雄馬&一徹のようだが、言わば韓国のエリート主義の上を行く超エリート主義ということだろうか。

<スピードと精密なテクニック>

 ソン・フンミンの武器は、何と言ってもスピードだ。183cm、77㎏と体格にも恵まれ、トップスピードでもブレのないテクニックがすばらしい。

 ブンデスリーガでプレーしている時から、ひとりで4、5人をドリブルで抜き去ってシュートする個人プレーで注目されていた。現在、トッテナムの指揮を執るジョゼ・モウリーニョ監督は、かつてコーチを務めていたバルセロナでブラジルの"フェノメノ(怪物)"、ロナウドを見ている。モウリーニョは今でもロナウドを「別格中の別格」と言っているが、ソン・フンミンにロナウド(・ルイス・ナザリオ・デ・リマ)を重ねて「ソナウド・ナザリオ」と形容したこともある。

 ロナウドがまさにそうだったが、"ソナウド"のほうも長距離をハイスピードでドリブルしてもバランスが崩れない。40mもスプリントすると、最後のシュートのところでパワーが欠けてしまいがちだが、最後までやり切る力がある。

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