レアルのサンス会長時代の栄華。マドリディスモの化身、ラウルの登場 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

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 1994年10月、17歳のラウル・ゴンサレスは、ホルヘ・バルダーノ監督に背番号7を与えられ、ユースから飛び級でプロデビューを飾っている。そのサラゴサ戦では、イバン・サモラーノの得点をアシストしたものの、決定機はことごとく外した。空のゴールにも、シュートは枠をとらえなかった。チームも3-2で敗れた。

 バルダーノは慰めの声をかけようと、帰りのバスでラウルの席に近寄った。そこで目を丸くしたという。気持ちよさそうに居眠りしていたからだ。英傑だけが持つ剛胆さだった。次の週、ラウルはサンティアゴ・ベルナベウのアトレティコ・マドリード戦で、痛快なワンタッチゴールを決めた。

 このシーズンを最後に、エミリオ・ブトラゲーニョはレアル・マドリードを去る。冷静沈着な31歳は、豪放磊落な17歳に道を譲ることになった。背番号7の"禅譲"だ。

 ラウルはブトラゲーニョと背格好は似ていたが、よりゴールゲッターとしての色が強かった。速くも強くもなく、驚くほどのテクニックがあるわけでもない。しかし、不思議とゴールネットを揺らすことができた。多くのゴールはワンタッチだった。

「ラウルはピッチを歩いているだけで、ディフェンダーを惑わす。タイミングを計れない。一瞬、存在が消えるというか、信じられないことだ」

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