94年W杯決勝の豪華メンバー集結。マッサーロ弾でイタリアがリベンジ (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 メンバーは若干、94年とは異なっていた。フランコ・バレージ、パオロ・ロッシ、ロベルト・ムッシ、アントニオ・ベナリーヴォ、アレッサンドロ・コスタクルタ、ルイジ・アポローニ、クリスティアン・パヌッチ、ステファノ・エラーニオ、デメトリオ・アルベルティーニ、ジャンフランコ・ゾーラ、ダニエレ・マッサーロ、ピエルルイジ・カシラギ。また、1990年イタリア大会の得点王、トト・(サルバトーレ・)スキラッチも参戦し、悪くないプレーを見せた。

 残念なのは、ロベルト・バッジョの姿がなかったことだ。なぜなら、少し前にもバッジョはあの日のPK失敗を嘆いていたからだ。

「今でもときどき、あのPK失敗を悔やんで眠れない夜がある。僕の子供のころからの夢は、W杯の決勝でブラジルとプレーし、1970年W杯(メキシコ大会)のリベンジを果たすことだった。しかしその夢まであと一歩のところで、僕は大きなミスを犯してしまった」

 バッジョにはぜひこの機会にリベンジを果たしてほしかった。欠場の理由は体調の問題だというが、それだけではないだろう。元ブラジル代表ブランコのように、参加だけしてプレーはしないという形もとれたはずだ。

 もちろん、この試合は勝負というよりも、お祭りだ。試合が始まると、みな現役時代よりは大きくなったお腹を抱えて笑っていた。だが、かつては世界のトップに君臨していた選手たちだ。試合が進むうちにだんだんと真剣みが増してきた。ヴィオラのシュートがオフサイドの判定でノーゴールにされた時は、みな真剣に悔しがっていた。

 試合は1-0でイタリアの勝利に終わり、イタリアは26年ぶりに雪辱を果たした。ゴールを決めたのはミランや日本の清水エスパルスでもプレーしたマッサーロ。バッジョ同様、94年の決勝でPKを失敗した選手であり、彼自身もリベンジを果たした形になった。

 マッサーロは58歳になるが、まだ十分に走ることができた。試合後、私が祝福の言葉とともにコメントを求めると、どこか苦しそうにこう言った。

「ゴールできたのは嬉しいけど、本当なら26年前にアメリカで勝っていたかったよ。この勝利があの時だったら......そう思うとちょっと泣けてくるね」

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