2019.12.19

新国立競技場からバルサ本拠地の
大改修へ。日本企業の挑戦

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

カンプノウ改修と日本企業(後編)

 FCバルセロナの本拠地、カンプノウの改修コンペを審査員全員一致で勝ち取った日建設計。以下に記すのは審査講評の一部だ。

「日建設計とパスカル・アウジオの提案は、最初の段階から一番ユニークでした。他案とは全然違いました。オープンで開放的。そしてエレガントです。気品があります。静謐な空間も備えています。時間も超越しています。これから50年経っても価値が失われることがない、消費されないデザインだと考えられます……」

全面改修後のカンプノウを正面からとらえたイメージ図 日建設計はこれまで、スポーツファンにはおなじみの施設を数多く手がけてきた。カシマサッカースタジアム、新潟のビッグスワン、さいたまスーパーアリーナ、東京ドーム、大阪の京セラドーム。そして、完成したばかりの有明体操競技場。現在、進行している渋谷駅周辺の巨大な再開発でも中心的な役割を担っている。

 新国立競技場にも絡んでいた。

 コンペで優勝したザハ・ハディド案で進行していた計画が、一転して流れた件を記憶している人は多いはずだ。コンペで勝った設計者はその後、(カンプノウにおける日建設計とパスカル・アウジオの関係のように)日本の設計会社と組んで実際の計画を進めなければならないという規定になっていて、その日本側のアーキテクトとして選定されていたのが日建設計を中心としたチームだった。ザハ案を受けた具体的な建設計画には、日建設計の英知が注がれていた。

 さらに言えば、日建設計は、新国立競技場の最初のコンペにおいて、ザハ・ハディドではなく、SANAA(妹島和世と西沢立衛による建築ユニット)と組んで作品を応募していた。ポテトチップのようなヒラヒラした形状の屋根が印象的な開放感のあるスタジアム案で、コンペの成績は3位。優秀賞に終わっていた。

 結局、新国立競技場のコンペはもう一度行なわれ、現在建設中の案が採用されることになったが、日建設計はそれには関わらなかった。そしてカンプノウのコンペには、ザハ案の実施設計をまとめあげたメンバーを、そのまま送り込むことになった。日建設計の村尾忠彦バルセロナ支店長は、コンペを制した要因のひとつに、新国立競技場のプロジェクトにその寸前まで携わっていたことを挙げた。