2019.12.19

ジダンの選手起用の慧眼と決断のすごさ。
レアルは戦術もバルサを上回る

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 伝統の一戦と訳せる「クラシコ」は、バルセロナとレアル・マドリードの”存在をかけた攻防”である。

 どちらかと言えば、バルサのほうが強迫観念は強い。なぜなら、軍事的独裁政権により民族的に弾圧を受けていた時代、中央の象徴だったレアル・マドリードに勝つことでのみ、自らの正当性を訴えられたからだ。たとえリーグ優勝しても、クラシコで敗れて解任された監督がいるし、レアル・マドリードに移籍したルイス・フィーゴがカンプノウに戻ってきたときには、子ブタの頭がピッチに投げ込まれた。

 もともと今年10月に予定されていたクラシコが延期されたのも、カタルーニャ州の独立運動の激化に端を発した大規模なデモ、ストライキが起きたためだ。

 12月18日、ようやく開催されたクラシコでも、現地警察が独立過激派と衝突した。過激サポーターも入り乱れ、警察官2人が重傷、100人以上がケガをしたという。逮捕者も出ており、会場の外では火がつけられる騒ぎがあった。

 しかし、当のクラシコは、双方じりじりとした様子で決着がつかず、0-0とスコアレスドローに終わっている。

カンプノウでのクラシコがスコアレスドローに終わり、憮然とした表情のリオネル・メッシ 本拠地カンプノウで戦ったバルサは、リオネル・メッシ-ジョルディ・アルバというホットラインが、最強時代を彷彿とさせるシーンを作り出した。クラシコ特有の緊張感のなかで触発されたのか、ジェラール・ピケも今シーズン最高に近いパフォーマンスだった。そしてGKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンはビルドアップで相手に蓋をされてもロングパスを通す芸当を見せた。

 しかし、バルサ本来のパスのリズムは影を潜めている。セルヒオ・ブスケッツが高熱で先発から外れた事情はあったにせよ、ボールプレーの質は無残だった。必然的に、アントワーヌ・グリーズマン、ルイス・スアレスも不発に終わっている。

 右サイドバックのネルソン・セメドは、明らかにノッキングしていた。上がる、受ける、預けるというタイミングが、バルサのオートマチズムに合わない。セメドが次第に勢いを失い、下がり始めると、中に絞って守るために、流れてきたカリム・ベンゼマにスペースを使われる。右サイドの不安で全体も下がって、メッシ、スアレスはプレスも弱いため、容易に自陣に踏み込まれたのだ。