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新国立競技場からバルサ本拠地の
大改修へ。日本企業の挑戦 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

「スタジアムはこうありたい。そう思いながらSANAAと一緒にやったのですが、カンプノウで僕らがやろうとしていることも、これと似通ったアプローチなのです」(亀井氏)

 改修後のカンプノウは、1階から3階まで広々としたバルコニー風のコンコースが、外に広がるように3層に折り重なっている点に加え、それぞれに架かっているシャープな形状の屋根にも目は奪われる。カンプノウはUEFA認定の5つ星スタジアムながら、その手のスタジアムが備えているべき屋根が、正面スタンドにしかかかっていない。しかし新スタジアムは、全面屋根付きに改修される。現在の正面スタンドの屋根も取り壊されることになる。

「エッジが薄くてシャープで、斜めに切れ上がっている屋根は、現在のカンプノウの中で最も特徴的な部分です。この屋根の記憶をどこかに残せないものかと考えた時、思いついたのが先ほど述べたオープンなスタジアムというアイデアです。その切れ込んだシャープな形を反転して、1階から3階までの各層に設けるコンコースのデザインとして使ってしまえと。普通、こうした場所は暗くなりがちですが、斜め上方向に切れ上がっているので光が入ってくる。風も流れる。最終的にはピッチの芝にも好影響を及ぼします」(村尾氏)

 現在のカンプノウは、1、2階席は前後左右対称だが、3階席は非対称だ。正面スタンドとバックスタンドで高さが違う。バックスタンドの「ヘネラル・ラテラル」と言われる場所が最も高い造りになっている。その高さに3階席のスタンドすべてを均(なら)し、屋根を平らに架けると言う。

「平らになった3階席にきれいな屋根がスパッと乗るイメージです。シンプルですが、ものすごく美しい。FCバルセロナからは屋根について、『FIFAの規定に従おうとして屋根を設けるのではありません。カンプノウはカタルーニャの人たち、ソシオの人たちの心の聖地です。いったんカンプノウに入れば、ゴール裏であろうがどこであろうが、心をひとつに保つ場所になります』という話を聞かされました。"ひとつ屋根の下"というコンセプトで捉えている点に、なにより感動させられました」(村尾氏)

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