バルサ本拠地大改修の設計を受注した日本企業。「コンペはCLでした」 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

「FCバルセロナのソシオの方と食事をする機会があって、その際、単刀直入に『どのようなスタジアムを望んでいるのか?』と訊ねてみたんです。するとこう返してきた。『フー・アム・アイ?』。私は誰なのだ。『あなたたちはスペイン人ですね』と言ったら『ノー』。スペイン人ではないと言う。しまったと思い、『申し訳ない。カタロニア人ですね』と言い直せば、まだ『ノー』と言う。わからなくなったので、『フー・アー・ユー?』と訊ね返してみました。すると『メディティラニアン』、地中海人だと言うんです。そして『ヒントを与えたのだから、イメージをスケッチしろ』とその場で言われて、太陽や船、ヨットや風などを描きました」(村尾氏)

 メディティラニアン。外装のプランを考えるうえでキーポイントになったのが、バルセロニスタは地中海人であるという視点だったという。

「その結果、私たちが辿り着いたのが "オープン・トゥー・オール" というコンセプトでした。縦の導線を含めた外装を作りなさいというコンペだったのですが、私たちがワークショップに参加するために実際にバルセロナに滞在してみると、外装は本当に必要なのかと思うようになりました。外装が必要なのは欧州の北に位置するスタジアム。ミュンヘンやロンドンなど冬が寒いところで、冬場でも温暖なバルセロナには必要ないのではないか。日本に比べて湿度も高くないし、いい風が入ってくる。とにかく気持ちがいい。その気候そのものをバルセロナの人は愛しています」(村尾氏)

 海(地中海)との距離が近い街。バルセロナの大きな特徴のひとつになるが、カンプノウは、海から幾分離れたエリアにある。地中海気分をより実感したい場所なのかもしれない。

 亀井社長は言う。

「国際コンペというのは通常、要項が出て提案したら、1回ヒアリングがあればいい方で、ないことも多いのですが、ここではワークショップが3回も開かれました。日建設計とジョアンパスカル‐ラモンアウジオ・アルキテクテスで、FCバルセロナと、決められたテーマについて話し合いました。

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