バルサ本拠地大改修の設計を受注した日本企業。「コンペはCLでした」
カンプノウ改修と日本企業(前編)
全面改修後のカンプノウ内部はこうなる。完成は2024年の予定だ カンプ(=スタジアム)ノウ(=新しい)。新しいスタジアムという意味を持つFCバルセロナの本拠地「カンプノウ」。1957年に建設され、現在62年目を迎えている。収容人員は9万9354人。サッカーが日常的に行なわれているスタジアムとしては世界最大の規模を誇る。
だがその割に、観客席から見るピッチは遠くに感じられない。上階ほど眺めは良好で、その正面スタンド最上階のゴンドラ内に割り当てられた記者席に腰を下ろせば、いきなり絶景が待ち構える。サッカーのゲームとしての面白さを堪能できる特等席と断言したくなる、圧倒的なビジュアルに身を委ねることができる。「バルサのサッカーを見るならここから眺めるのが一番ですよ」と、故ヨハン・クライフに囁かれている気になる。
UEFA認定の5つ星スタジアムであることは言うまでもない。それ以外のスタジアムには開催資格がないチャンピオンズリーグ決勝が行なわれたのは1998-99シーズン。マンチェスター・ユナイテッドが土壇場でバイエルンに逆転勝ちした一戦だ。
筆者が最初に観戦したのは1982年スペインW杯だった。この時はサンティアゴ・ベルナベウで決勝が行なわれ、カンプノウは開幕戦(アルゼンチン対ベルギー)だった。その10年後に開催された1992年バルセロナ五輪では、カンプノウは決勝戦を含むサッカー競技のメイン舞台となったが、一方でFCバルセロナはカンプノウ脇に保有する体育館=パラウ・ブラウグラナを柔道競技の会場に提供していた。古賀稔彦や吉田秀彦が金メダルに輝き、柔ちゃんこと田村亮子が銀メダルに泣いた舞台である。
肩書きは「FC」だが、れっきとした総合スポーツクラブである。体育館でハンドボールの試合を観戦したあと、隣のカンプノウに移動し、バルサ戦を観戦するというバルセロニスタも少なくない。その脇にはスケートリンク(ピスタ・デ・ジェル)もある。かつて、FCバルセロナが総合スポーツクラブである意味を、当時の事務局長氏に訊ねたことがあるが、「カタルーニャ人のすべての嗜好に応えるクラブでありたい」と述べていた。
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