バルサ本拠地大改修の設計を
受注した日本企業。「コンペはCLでした」 (3ページ目)
日建設計の本社を訪ねれば、受付ロビーには新カンプノウのミニチュア模型が展示されていた。スタジアム好きの血はそれを見ただけで騒ぐことになる。単なる改修ではなく、大改築であることが一目瞭然となる。パッと見、カンプノウの改修版ではなく、新築スタジアムに見えるほどだ。
これまでの経緯や現在の状況について、亀井忠夫社長と村尾忠彦バルセロナ支店長が、建築の素人にもわかりやすい説明と解説をしてくれた。国際的なコンペを勝ち抜いた当事者から聞かされると、完成したスタジアムにいち早く招かれたかのような高揚感を覚えるのだった。
「最初の審査の結果、我々はこの世界的コンペのトップ8にノミネートされました。FCバルセロナにその後のコンペの進め方を尋ねると、『これはチャンピオンズリーグだ』と言われました。『あなたたちはいま準々決勝を戦おうとしている。ここから8、4、2と絞っていきます』と。私たちは8番目だと思って取り組みました」(村尾氏)
クラブからまず求められたのは、新しい外装だった。
「現在のカンプノウは3階席まで階段で上がります。エスカレーターが用意されているスタジアムに比べて、弱者に対して厳しいスタジアムと言えます。『そうした縦の導線を含めた外装のアイデアを提案してください』と言われました」(村尾氏)
スタジアムを造りながら、並行して試合を行なうアイデアも問われることになった。改修も簡単な話ではない。カンプノウの収容人員は9万9354人で、年間シートを保有する会員数は8万5000人だ。改修する間、たとえば、モンジュイックの丘にあるバルセロナ五輪スタジアムを代わり使用しようとしても、収容人員は5万6000人程度なので、8万5000人の会員を収め切ることはできない。現カンプノウに会員の席を収容しながら、いかに改修工事を進めるか。そのアイデアを求められたのだ。
そしてもうひとつの要求が、ミュージアムとナイキショップの拡張だ。FCバルセロナは、現在年間180万人を数えるカンプノウツアーの来場者を250万人に増やそうとしていた。そのためにはどうするか。
まずは外装。
3 / 5