低迷ドイツ代表が王座奪還へ採用。メッシを育てた「フニーニョ」とは (2ページ目)

  • 鈴木達朗●文 text by Suzuki Tatsuro
  • photo by Getty Images

 ドイツ人のヴァインは、じつは2016年に亡くなるまでバルセロナで過ごした、フィールドホッケーの世界的名将だ。そしてフニーニョは、スペインサッカー協会公式の指導者向け教本に書かれた、トレーニングメニューのひとつである。これは80年代半ばに、当時バルセロナの育成組織のコーチをしていたカルレス・レシャックがヴァインと出会い、その練習を取り入れたことから始まっている。

 バルセロナを納得させたのは、とりわけ視野や認知、脳・神経系の訓練を体系的にまとめ、それを競技のトレーニングのなかに取り込んでしまう、ヴァインの手腕だった。そしてこれらのトレーニングによって、バルセロナはシャビ・エルナンデスや、アンドレス・イニエスタ、リオネル・メッシといった黄金時代の選手を作り上げていく。

「シャビは、仮に相手がプレッシャーをかけて来た状況下でも、慌てることはないでしょう。それは、頭を素早く左右に振りながら、常に視覚情報を"理解している"からです。ボールを受ける数秒前には、適切な身体の向きを整え、決して次のプレーを実行するために不可欠な情報を見落とすことはありません。視覚的に捉えた情報は、脳内で彼の経験から集められたデータバンクと照合され、コンマ数秒のうちに処理されます。そうして、この処理された情報をもとにした予測が、彼のすばらしいテクニックを身に着けた身体によって実行に移されるのです」

 このように説明していたヴァインは、ドイツの指導者たちが若年層にあまりにも教えすぎると話し、年齢に合わせた「刺激」を与えることで、自分たちの解決策を探る作業が必要だと強調していた。9歳以下の子どもたちに合わせて作られたフニーニョは、そのために最適化されたゲームなのだ。

 今回、ドイツサッカー連盟のフースバルレーラー(日本のS級コーチ相当)の養成コース担当責任者、ダニエル・ニーズコフスキ氏に話を聞くことができた。ドイツサッカー連盟は積極的な働きかけにより、選手育成の現場でフニーニョが導入されはじめている。

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