勝っても晴れないバルサの暗雲。次期監督候補の名前が取り沙汰

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

「プレーそのものはベストではない。でも、我々はリーガでも、チャンピオンズリーグ(グループリーグ)でも首位にいる。もう少し我慢してほしい」

 チャンピオンズリーグの第4節。スラビア・プラハと本拠地カンプ・ノウでスコアレスドローに終わったあと、バルセロナのDFジェラール・ピケは語っている。

 今シーズンのバルサは、かつてのような「ボールの主」と言われる試合を体現できていない。パスが速いテンポでつながらず、攻撃はノッキング。スラビア・プラハ戦も、ボールは支配するものの、敵陣深くになかなか入れなかった。リオネル・メッシが中盤に下がってボールを受け、パス出しをするが、距離の長いパスを読まれてカットされた。

「メッシと(アントワーヌ・)グリーズマンは断線」

 スペインの大手スポーツ紙『マルカ』は、両スターの調和がないことを指摘。2人だけではなく、各選手をつなげる線が途切れている状況と言える。個人で打開するしかないありさまだ。

 スラビア・プラハ戦後、バルサはリーグ戦でセルタ、レガネスにどうにか連勝。勝利で批判を封じ込めたが、内容は伴っていない。

 エルネスト・バルベルデ監督解任のカウントダウンは始まったのか?

アントワーヌ・グリーズマンとのコンビネーションの欠如が指摘されたリオネル・メッシアントワーヌ・グリーズマンとのコンビネーションの欠如が指摘されたリオネル・メッシ「バルサは日々、フロレンティーノ・ペレス会長のレアル・マドリードに近づいている」

 かつてバルセロナの育成組織「ラ・マシア」で育ち、ジョゼップ・グアルディオラ監督時代にトップデビューしたマルク・クロサス(すでに引退)はそう皮肉っている。「金満クラブになって、有力選手を買い集めているだけ」という批判だろう。

 実際、クラブはフィリペ・コウチーニョに約165億円、ウスマン・デンベレに約130億円、フレンキー・デ・ヨングに約120億円、アントワーヌ・グリーズマンに約150億円と、選手獲得に湯水のように金を使っているが、その成果は相応には出ていない。

 一方、その影響でラ・マシアの有望な若手選手は活躍の場を失うことになっている。

 バルベルデ監督は就任以来、プレーのインテンシティを重視。アルトゥーロ・ビダル、ネウソン・セメドのようなフィジカルの強い選手を重用し、4-4-2でダブルボランチを組ませる戦闘的スタイルを採用してきた。2017-18シーズンを最後にアンドレス・イニエスタが退団したことによって、その流れは決定的になった。

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