久保建英はなぜマジョルカを選んだのか。新天地の環境と指揮官の特徴は (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images


 昨シーズン、久保と同じ18歳でレアル・マドリードに入団したブラジル代表ヴィニシウス・ジュニオールは当初、カスティージャを主戦場にしていた。目立った活躍を示したことで、5試合でトップ抜擢が決まった。そしてセンセーショナルな突破力を見せ、定位置をつかんだ。

 もっとも、こうしたケースは珍しい。

 レアル・マドリードにおいて、若手は武者修行することがひとつの通例となっている。ウクライナ代表の若きGKアンドリー・ルーニンは、早々とバジャドリードへ期限付き移籍。現在の主力選手でも、ブラジル代表カゼミーロ、スペイン代表ルーカス・バスケス、ダニエル・カルバハル、ウルグアイ代表フェデリコ・バルベルデなど、多くの選手がトップリーグのクラブでの期限付き移籍経験を経て、復帰後にポジションを手にしているのだ。

 マジョルカとレアル・マドリードは友好的な関係を保ち、多くの選手が行き来している。レアル・マドリードの有望選手だったサミュエル・エトーやルイス・ガルシアなど、多くの若手がマジョルカでプレーして飛躍した。一方で、現在レアル・マドリードに所属するマルコ・アセンシオはマジョルカで生まれ育った選手だ。

 では、久保にとってマジョルカへの期限付き移籍は最高の選択だったのか。

 マジョルカは地中海に浮かぶ島。気風は内陸よりも自由なところがある。気候は温暖。昇格したばかりのチームだけに、過度の期待もない。残留争いになった場合は、心身をすり減らすことになるが、当面は(他のチームよりも)ストレスなくプレーできるはずだ。

 チームを率いるビセンテ・モレーノ監督は、2部ヒムナスティック・タラゴナ時代には鈴木大輔(現在は浦和レッズ)を指導し、3位となって昇格プレーオフを戦っている。論理的な思考の持ち主で、日本人に対する差別的な意識もない。一昨シーズンまで2部Bにいたマジョルカを率いて、2年で1部まで導いた気鋭の指揮官だ。

 本拠地ソン・モイスで行なわれたエイバルとの開幕戦は4-1-4-1の布陣で挑み、2-1で勝利を収めている。プレッシングとリトリートを使い分け、ガーナ人MFイドリス・ババのアンカーが特徴的か。ポジション的優位を作りながら守り、鋭いカウンターを放っている。

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