2019.05.01

アヤックス、CL決勝進出に前進。
猛攻を許したトッテナムの計画ミス

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Getty Images

 アヤックスは、古くから「育てて売るクラブ」として知られている。好素材を集め、商品に整えて各地に売りに出す。欧州市場で加工貿易のような役割を担い、君臨してきた。今季終了後、現在のスタメン選手の大半が金満クラブに引き抜かれていく姿は哀れを誘うが、それがこのクラブの生き方なのである。

 見返りは十分期待できる。彼らの価値はチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントを勝ち上がれば勝ち上がるほど、上昇する。同様にクラブとしての価値、ブランドも高まる。アヤックスはいま、とてもおいしい立場に置かれている。

 ビッグクラブとは基本的にスタンスが違う。CL優勝を狙っているわけではない。現在のメンバーは、ビッグクラブとは異なるコンセプトで集められた選手たちだ。その構成も微妙に違う。ピッチ上には、他にはない組み合わせが成立している。

 たとえば前線4人の関係性だ。ダヴィド・ネレス(左・ブラジル)、デュサン・タディッチ(中央・セルビア)、ハキム・ジエク(右・モロッコ)。そしてこの3人を1トップ下の位置で支えるオランダ代表の22歳、ドニー・ファン・デ・ベーク。

トッテナム戦で決勝ゴールを挙げた若きオランダ代表、ドニー・ファン・デ・ベーク(アヤックス) なんとも言えぬ顔ぶれだ。優勝を狙う他のクラブには集まりにくい4人。考えにくい組み合わせのカルテットなのだ。彼らが奏でる音色やリズムも、他とは全然違う。軽やかさもあれば、弾力性や粘り気もある。モッチリ感もあればシャッキリ感もある。新鮮で独得の味わいに満ちている。それに絶妙な選手間の距離やポジショニングが加わると、ボールの流れ方も意外性溢れる唯一無二のモノになる。

 相手のトッテナム・ホットスパー(スパーズ)と比較すれば一目瞭然。こちらは好選手揃いとはいえ、”普通”だ。パワフルでスピーディではあるが驚きはない。どこかで見た覚えのあるサッカーだ。この日は、長身のフェルナンド・ジョレンテをスタメンで使ったせいなのか、空中戦に頼るイングランド的な単調さも目に付いた。

 スパーズとアヤックス。ともに多国籍軍として括ることができるが、相手を混乱に導く無国籍感を漂わせていたのはアヤックスだ。この日の決勝ゴールが生まれた前半15分のシーンも、見る側の目を釘付けにする展開力に富んでいた。