堂安律が「0.01秒」の世界を会得。代表でもゾーンに入ったプレーに期待 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 ポゼッション時、メミセビッチはフローニンゲンの起点となる。ルックアップして堂安の姿を確認すると、ためわらずに縦パスを入れた。やがてヘーレンフェーンはふたりの間のコースを消しにかかるのだが、今度は堂安が囮(おとり)となって、メミセビッチから他のチームメイトにパスが出た。

「作り込まれたビルドアップだな」と、私は感じた。すると、堂安は「そんなことはないんです」と言って続けた。

「彼とはすごく仲がいいので(笑)、それが間違いなくピッチに表れています。センターバックからボランチにポジションを移して、俺をすごく生き生きとさせてくれている。感謝したいですね」

 たしかに以前、「メミセビッチと仲がいい」と聞いたことはあった。だが、両者のプライベートな間柄がチーム全体に好影響を及ぼし、ビルドアップのオートマティズムを生んでいたとは思いもしなかった。

 後半のフローニンゲンは試合のコントロールに務め、ヘーレンフェーンにシュート1本しか許さなかった。堂安はミドルシュートやフェイントを繰り返し、相手のマークを無力にするプレーもあったが、前半と比べれば無難にプレーをまとめていた。

 後半アディショナルタイムになると、デニー・バイス監督は観客にスタンディングオベーションを促し、堂安をベンチに下げる。「今日のマン・オブ・ザ・マッチは堂安です!」という場内アナウンスが叫ぶなか、堂安は割れんばかりの拍手を浴びながら退いた。

 前節のエクセルシオール戦(4-2でフローニンゲンの勝利)でも堂安は、相手のマークを背中でブロックしながら浮き玉を巧みにトラップし、反転しながらのボレーシュートでスーパーゴールを決めている。あの日、彼は現在のプレーの感触をこう語っていた。

「相手がどう動くか、先の先まで読めるので、余裕を持つことができている。0.01秒ぐらいの感覚だと思うんですが、言葉で表せない感じです」

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