メッシへの依存度がさらに上昇...バルサはCLタイトルを奪還できるか

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蹴球最前線──ワールドフットボール観戦術── vol.42

 サッカーの試合実況で日本随一のキャリアを持つ倉敷保雄、サッカージャーナリスト、サッカー中継の解説者として長年フットボールシーンを取材し続ける中山淳、スペインでの取材経験を活かし、現地情報、試合分析に定評のある小澤一郎――。この企画では、経験豊富なサッカー通の達人3人が語り合います。

 今回のテーマは、激戦の続くチャンピオンズリーグ(CL)。昨シーズン、国内ではタイトルを獲得したものの、CL優勝を逃したバルセロナは、再び頂点に立てるのか。リオネル・メッシら、現有戦力と新戦力の融合や、戦術の変化などを分析する。連載一覧はこちら>>

――今回の「蹴球最前線」は、今シーズンのCLで優勝候補と目される4チームについて分析していますが、最後にバルセロナについて注目してみたいと思います。ここまでは開幕2連勝と、順調に勝ち点を積み重ねているように見えますが、お三方は今シーズンのバルセロナをどのように見ていますか?

イニエスタが移籍した新チームの今季バルセロナイニエスタが移籍した新チームの今季バルセロナ小澤 まずバルサのチームとしての特徴は、レアル・マドリーやマンチェスター・シティに似ているのですが、いちばんの違いは、リオネル・メッシへの依存度が高くなっているため、フィニッシュの局面でメッシが絡まないとチャンスにならないところです。また、守備から攻撃への切り替えにおいては、前線の選手があまりスプリントをしないので、ショートカウンターもロングカウンターもほとんど見られません。

 それと、昨シーズンからの変化という部分では、今シーズンはウスマン・デンベレが開幕から結果を出しているので、デンベレを左に、メッシを右に配置するケースが多くなっているという点です。ただ、デンベレはまだ自分がボールを受けようとする意識が高すぎてスペースメイクの部分では課題が残されていると感じますし、ボールを失った後の切り替えの時にすばやくプレスに行かないシーンも目立っています。チームコンセプト上、ボールの即時回収が求められるところなので、そこも課題だと思います。もちろんこれは、デンベレ個人ではなくチームとしての課題です。

中山 僕も今シーズンのバルサを見たときに、デンベレに注目していました。ケガで長期の離脱を強いられた加入初年度の昨シーズンと比べて、個人としての特長を生かすよりも、周りとのコンビネーションを意識したプレーが目立っていたのでかなり期待していました。ただ、小澤さんが指摘したとおり、とくに守備面については課題がまだ多いのも確かですね。実際、第2節のトッテナム戦でスタメンを外れたことも、その証明ではないかと思います。

 ただ、個人的に彼に対しては過度に期待しないようにしています。というのも、彼は昨夏に20歳でバルセロナというビッグクラブに加入したわけですが、その前はドルトムントで1シーズン、さらにその前はレンヌで1シーズンと、実質的にトップデビューしてからまだわずか3シーズンしか経験していないからです。しかも18歳から毎年所属チームが変わっていくなか、移籍金も急上昇して注目度が一気に高まったため、その変化に対する適応の部分と、周囲からの期待の大きさに、ギャップができてしまっているように思います。

 フランス代表でもキリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)との比較をされたりしますが、ムバッペは別次元の怪物ですから、それもデンベレにとって不幸だと思います。だから、なるべく長い眼で見て、彼が今シーズンどのように成長していくのかをじっくり見届けたいと思っています。彼自身も今シーズンに懸ける思いは相当に強いと思いますし、まだまだ伸びる選手だと思います。

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