ムバッペは「W杯優勝の呪い」を乗り越える。「大事なのは次の試合だ」 (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ワールドカップでの優勝は、ムバッペの日常生活を変えることもなかった。以前から彼は、自宅で"金持ちの囚人"のような暮らしをしていた。あまりに有名なので外出することもままならない(僕のフランス人の友人は、彼の5歳の息子が、コルシカ島のビーチで短いバカンスを楽しんでいたムバッペにまとわりついている動画を自慢げに見せてくれた。ムバッペは友人や家族と一緒に休暇を楽しもうとしていたのに、嫌な顔ひとつせずサインに応じていた)。

 ムバッペが解放されるのは、フットボールをやっている時くらいなのだろう。彼はほかの選手の顔に、緊張がはっきり見て取れることに驚くという。彼自身はそんなものを感じないからだ。

 それほど犠牲を払わなくても、たいていのことは簡単にできるようになる──ムバッペは以前、そう語ったことがある。
(つづく)

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