2018.09.23

ネイマール獲得、カタールW杯招致の陰で…
「今そこにある疑惑」

  • ジェームス・モンターギュ●取材・文 text by James Montague 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

フットボール・オーナーズファイル(5)
カタール・スポーツ・インベストメンツ/パリ・サンジェルマン

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 その発表はまるで、ナイトクラブのグランドオープニングのようだった。

 照明が抑えられた会見場は記者で溢れかえり、派手な青のフラッシュと大音量の4つ打ちのビートが主人公を迎えようとしている。壇上に設置された大きなスクリーンがメッセージを告げる。そして、スーツに身を包んだブラジル代表FWが、パリ・サンジェルマン(PSG)のナセル・アル・ケライフィ会長と共に部屋に入ってきた。

「ようこそパリヘ、ネイマールJr.」

“華の都”のクラブは2017年8月、当代随一のアタッカーをバルセロナから獲得し、世間に披露した。その移籍金は2億ユーロをゆうに超え(2億2200万ユーロ:当時のレートで約291億円)、それまでの史上最高額の倍を軽く上回った。

PSG入団の記者会見で、ケライフィ会長と握手を交わすネイマール photo by Getty Images PSGはカタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)の持ち物だ。つまり、カタールという国家がオーナーである。アル・ケライフィ会長は、どちらも流暢なフランス語と英語で「世界中のヘッドラインを独占した」と言った。

「(この移籍は)長く語り継がれるものだ」

 彼の言うとおりである。その数字は途方もない。ネイマールの獲得にPSGが費やした金額は、サラリーやボーナスなどを含めると、総額で5億ポンド(約743億6000万円)に達する可能性さえあるという。そのディールはすべて、カタールで考案されたものだ。中東の”スーパーリッチな湾岸国”は、世界のフットボール地図に存在感を示し始めている。

 2011年、カタールは国家の投資機関であるQSIを通じてPSGを買収し、ネイマールの獲得も国家主導で進めた。ペルシャ湾岸に位置する小国はフットボールの最高位に居場所を求めているが、それは簡単なことではない。しかし、ネイマールを迎えたことで、そこにまた一歩近づくことができた。実力も人気も世界最高の選手を全盛期で迎えたことは、彼らが起こした”フットボールのクーデター”とも表現できる。

 2000年代に入った頃、カタールのことを知っているフットボールファンは皆無に近かった。しかし実は、前首長のハマド・ビン・カリファ・アール・サーニのもと、天然ガスによって手にした莫大な資金を用いて、スポーツに巨額の投資を始めていた。