W杯3位決定戦を見て思う「日本がイングランドになっていた可能性」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 真面目さは十分伝わってきた。試合を活気づかせる薬にもなっていた。しかし、それだけで両者の差を埋めることは不可能だ。サッカーの質で勝ることが、3位への道として欠かせないものとなる。

 ところが、眺めのいいスタンド上階から俯瞰すると、その点でもベルギーに劣ることが、大真面目に頑張れば頑張るほど、鮮明になった。

 ベルギーの布陣は3-4-3。両ウイング"ハーフ"を、ウイング"バック"と見なせば5-2-3だ。対するイングランドは3-5-2。布陣を同様にかみ砕けば5-3-2だ。

 5-「2-3」(ベルギー)対5-「3-2」(イングランド)。攻撃が先細りになりやすいのは「3-2」のイングランドだ。ボールを運ぶ形はクリスマスツリー型になる。前にいくほどプレーの選択肢は減る。最後は2トップに託すサッカーになる。

 対するベルギーは「2-3」。前線に3人いる。ルカク、アザール、デブライネ。顔ぶれで上回るうえに、多彩さという点でも期待できる。イングランドのパスワークが、2点間(パスの出し手と受け手)の関係になりがちなのに対し、ベルギーには3人目が存在する。

 パスコースが複数あるベルギーと、ひとつしか見えないイングランド。可能性を感じさせる攻撃と、感じさせない攻撃。後者は言ってみればゴリ押しだ。出たとこ勝負の攻撃である。これを完遂させるためには、高い個人能力、あるいは高度な頑張りが不可欠になる。

 だが、イングランドの2トップ、ハリー・ケインとラヒム・スターリングは、ベルギーの3トップに力量面で劣る。期待できるのは頑張りのみ。イングランドの勝利は、この構図が鮮明になった瞬間、期待薄になった。

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