日本を悲嘆させたベルギーGKの
美技はバレーボールから生まれた
7月11日、サンクトペテルブルクスタジアム。ロシアW杯準決勝で、ベルギーのGKティボー・クルトワ(チェルシー)は、フランスを相手に、技を極めた職人のようなセービングを見せている。
出色だったのが、前半40分だ。ベルギーの左サイドの守備を完全に破られるなか、相手選手と1対1になったが、クルトワは最後まで体を倒さず、目をボールから離さず、センチ単位で距離を詰めた。それによって、少しでもコースを消し、じわりと圧力を加える。それでも、放たれた相手のシュートは完璧に近い軌道で、ゴールのファーサイドに転がるはずだった。
しかし、クルトワは右足を全力で伸ばし、ボールに当て、その軌道を変えることで、失点を阻止した。派手さはない。しかし、GKとしての素質に恵まれ、それを鍛えてきたものにしかできないセーブだった。
クルトワはロシアで、日本を悲嘆させ、ブラジルを失意に陥れ、フランスに立ちはだかった。その技を謳歌した――。
準決勝フランス戦でも再三の好プレーでベルギーを救ったティボー・クルトワ クルトワは2011-12シーズン、10代でアトレティコ・マドリードに入団し、3シーズンをかけてGKとして成熟している。当時から、ある1点で際立っていた。
「ENVERGADURA(エンベルガドゥーラ/スペイン語で「リーチの長さ」)」。
それがクルトワのGKとして最大の資質だといわれた。単に手足が長いだけではない。それを十全に用いることができるのだ。
GKは限られた空間を守るため、手足がどこまで届き、どこには届かないかを計算する。そこからわずかに限界を超えるような動きを見せることができるか。それが一流と二流の違いとなる。その点、「ENVERGADURA」は防御力の基本値のひとつといえる。
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