日本を悲嘆させたベルギーGKの美技はバレーボールから生まれた (3ページ目)
ロシアW杯で使用されたボールは、GK泣かせの"小さな悪魔"のようだったが、クルトワはそれをこともなげに"飼い慣らした"のだ。
クルトワはサッカーを8歳で始めているが、当初は左利きで走力もあったことから、攻撃的な左SBだったという。左足のクロスは巧みで、CKではヘディングシュートを決めたりしていた。フィールドプレーヤーとしての道も十分にありえた。
しかし、あるトーナメントに参加したときのことだ。所属していたのはGKが不在のチームで、「みんなで持ち回り」だったのだが、クルトワは自分の順番で図抜けたゴールキーピングを見せた。そして、その大会のベストGKに選ばれたのだ。
「これからもGKをやるか?」「別にやってもいいよ。サイドバックよりも面白いかもね」
コーチとの何気ないやりとりで、進むべき道は決まった。
以来、「ENVERGADURA」を研ぎ澄ますことによって、クルトワは世界最高のGKといわれる領域に到達した。
「誰が対戦相手でも、チームが勝つことで自分の存在を証明したい」
かつてそう語っていたクルトワは、ロシアW杯で、ベルギーをベスト4に導く立役者になっている。チームが果敢なアクションフットボールで勝ち上がれたのは、その神がかったセービングがあったからだろう。執拗に守りを固めたフランスを前に0-1で敗れ、その道を閉ざされたが、大会を飾る守護神の称号は与えられるべきだ。
「このレベルになると、ディテールがモノをいう」
フランス戦後のクルトワは、勝者になれなかった悔しさだけを噛み締めていた。
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