アルゼンチンは「監督シカト作戦」で復活へ。南米勢の逆襲なるか?

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 ヨーロッパで開催されている今回のW杯だが、スタジアムに足を運ぶと南米チームのサポーターの多さに驚かされる。モスクワで行なわれたドイツ対メキシコ戦など、どう考えても地理的にはドイツの方が近いのに、スタンドの75%はメキシコのチームカラーである緑で埋め尽くされていた。それだけ南米の人々のワールドカップへの思い入れは強いのだ(メキシコは正確には北中米だが、南米のスピリットを持っている)。

 だが、グループリーグで、サポーターの期待通りに戦えた南米のチームは非常に少なかった。今大会は全体的にサプライズが多いが、南米勢で初戦で勝利を挙げたのは、わずかにメキシコとウルグアイだけというのは、やはり驚きだった。

 アルゼンチンの大手リクルート会社は、第1戦が終わった後に、皮肉を込めてこんな広告を出した。

「南米チームの監督の方々に再就職先を斡旋(あっせん)します」

巻き返しを図るアルゼンチンのリオネル・メッシ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA巻き返しを図るアルゼンチンのリオネル・メッシ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA ヨーロッパにとって、そしてたぶん日本にとっても、サッカーはスポーツだ。もちろん試合に勝てば盛り上がり、負ければ悔しく、熱く自チームを応援するだろうが、それが人生のすべてではない。

 一方、南米ではサッカーがすでに人生の一部だ。人々は命をかけて自国のチームを応援する。そのプレッシャーは、うまくいけば大いなる力となってチームを後押しするが、同時に大きな重圧となって選手にのしかかってくる。

 グループリーグでドイツが敗退したことは大いなる驚きだった。ドイツ国民のショックは計り知れない。それでも、ドイツの選手たちは国に帰ることができるだろう。しかし、もしアルゼンチンやブラジルが敗退していたら......考えただけでも恐ろしい。

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