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乾貴士、ホーム最終戦で胴上げ→落下。
バスクの山に響くイヌイコール

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Getty Images

 リーガ・エスパニョーラ第37節エイバル対ラス・パルマス。試合終了後のセレモニーで乾貴士はもみくちゃにされた。

 本人によれば「隠れていた」そうだが、チームメイトに発見された背番号8番は、やはり今季でチームを退団することになり、この試合がホーム最終戦となったダニ・ガルシアに続いて宙を舞った。ただ、違いがあるとしたら、キャプテンは普通に胴上げが終わったのに対して、乾のほうは、胴上げが終わってチームメイトが手を離すとそのまま地面に転がり、足蹴にされてしまったのだ。

エイバルの今季ホーム最終戦、ラス・パルマス戦にフル出場した乾貴士エイバルの今季ホーム最終戦、ラス・パルマス戦にフル出場した乾貴士 その光景は、エイバルの本拠地、イプルアに残った人々を笑顔にするものだった。たとえ来季は違うチームに移っても、"エイバルはお前のうちだからな"と、旅立ちを決めたやんちゃ坊主に対してエールを送っているような雰囲気に包まれた。乾に"暴行"を加えた犯人のひとり、GKのジョエル・ロドリゲスに対して"エア飛び蹴り"で仕返しをする乾を見ていると、彼が本当にエイバルでのサッカーと生活を楽しんでいたんだなと感じられた。

「自分にとってこの3年間は本当に宝物だった」

 乾は入団直後、2部降格をなんとか免れた1部の底辺のチームであるエイバルのことを舐めていたようなところもあった。「このチームだったら俺が王様でやれる」。そんな気持ちだったのかもしれない。

 だが練習初日、周囲のレベルの高さに驚いた。そして自分は王様ではなく、このチームのために身を捧げる兵士として戦わなければいけないと、自惚れた気持を捨て去った。エイバルの、指揮官ホセ・ルイス・メンディリバルの求めるサッカーのために全力を注がなければいけないと考えを改めた。

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