よく聞く大ケガ「前十字靱帯断裂」。
先進ドイツはどう対処しているか

  • 鈴木智貴●取材・文 text by Suzuki Toshiki
  • photo by Getty Images

「サッカー選手につきもの」といわれるケガの中でも、ほぼ決まって長期離脱を強いられてしまう重傷のひとつが、前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)の断裂(損傷)だ。現在のブンデスリーガ1部でも、6人もの選手がこの負傷からの復帰を目指してリハビリに励んでいる。

 ブンデスリーガ所属選手の負傷に関する1万件以上のデータ(2009年以降のもの)を取りまとめたウェブサイト『Fußballverletzungen.com』によると、ヒザの前十字靱帯を断裂した選手は、負傷から平均239.7日後、つまり7~8カ月後にはグラウンドへのカムバックを果たしているという。

3年前に左ヒザ、昨年は右ヒザの前十字靱帯を負傷した宮市3年前に左ヒザ、昨年は右ヒザの前十字靱帯を負傷した宮市 2015年夏、アーセナルからブンデスリーガ2部ザンクトパウリへ移籍した宮市亮は、加入直後に左ヒザの同箇所を負傷しており、やはりこのデータのように、練習再開まで約8カ月の期間を要している。

 不運にも彼は、今シーズン開幕前にも右ヒザの前十字靱帯断裂を負い、そこから約5カ月が経過した12月7日、ボールを使ったトレーニングを始めたことを自身のインスタグラムで公表。そして今年の2月上旬には、チーム練習へ部分的にではあるが合流を果たしている。

 一方で、2015-16シーズンに前十字靭帯を断裂したボルシアMGのパトリック・ヘアマンは、たった133日で公式戦のメンバー入りを果たし、また、当時レアル・マドリードでプレーしていたサミ・ケディラも、2013年11月に同じ悲劇に見舞われながら、6カ月を待たずに復帰している。

 しかし先述の『Fußballverletzungen.com』のデータに照らし合わせれば、宮市の復帰ペースは順調そのものであり、ヘアマンやケディラのようなケースのほうが、むしろ異例なのだろう。

 昨年末、ドイツ誌『シュピーゲル』のオンライン版に「アマチュアとプロ、2つの十字靱帯を比較」というタイトルの記事が掲載された。これは、「前十字靱帯断裂を負った場合、なぜアマチュアおよび草サッカーの選手は、復帰までにプロ選手の倍近くの日数を要するのか」というところに焦点を当てたものだ。

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