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ネイマールに逃げられたら...。
PSGは身の丈に合ったクラブに戻る時 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 PSGは現状を抜け出すためにどうしようとしているのか。その点は、なかなか見えてこない。PSGに対するカタール側の主な援助はカタール観光局との「スポンサーシップ契約」で、年間1億7500万ユーロ(約230億円)だ。

 しかしこの金額を含めても、PSGの売上高はヨーロッパのクラブのなかで7位でしかない。昨年の売上高は4億8620万ユーロ(約635億円)。マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリード、バルセロナより1億5000万ユーロ(約200億円)以上も少ない。
 
 カタールのオーナーたちはもっと多額の金をつぎ込んでもいいと思っているだろうが、UEFA(欧州サッカー連盟)の「フィナンシャル・フェアプレー・プログラム(FFP)」の規定によって、売上高を超える支出は認められていない。しかも、ネイマールがフランスリーグに失望を感じ、PSGがチャンピオンズリーグで伸び悩んでいることから、他のスター選手もフランスのクラブへ行くのをためらうだろう。

 それでもPSGは崩壊しない。

 カタール人のオーナーたちは、少なくとも2022年のワールドカップがカタールで開かれるまではPSGを支えるだろうし、もっと長く支援するかもしれない。PSGへの出資額は、カタールがワールドカップ開催に向けたインフラ整備につぎ込もうとしている推定1600億ユーロ(約21兆円)という金額に比べればわずかなものだ。PSGを支援していれば、フランスの政界とパイプを築くことにもつながる。

 仮にカタール・マネーがなくなったとしても、人口約1200万のパリと、そこに本拠を置くトップリーグ唯一のクラブは、フランスリーグに君臨しつづけるはずだ。意外に思えるかもしれないが、おそらくPSGのサポーターには他のフランスのクラブより熱いファンが多い。

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