2部で5位からプレミアへ。ハダースフィールドの夢を支える無名選手 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「今のチャンピオンシップを見てみろ。金を無駄遣いして、オーナーも外国人ばかりだ。ブライトンの昨シーズンの年俸総額は2600万ポンド(約36億4000万円)を超え、ニューカッスルは6000万ポンド(約84億円)以上。うちは1100万ポンド(約15億4000万円)だった。ここまでやれるシーズンはもうないだろうと思ったから、まさに運命の瞬間だった」

 シンドラーのシュートがゴールに突き刺さった後、ウェンブリーの巨大なスクリーンには、通路に突っ伏して、歓喜の涙を流しているホイルの姿が映し出された。彼は今でも、普通のファンのように振る舞う。

「昨シーズンは、クラブの歴史のなかで最も大きな年だったと思う」と、ホイルは言う。彼はボーンマスやスウォンジーなど、同じような規模のクラブがプレミアリーグに定着していることに注目しているが、プレミアのあるクラブの会長が彼に言った言葉を忘れない。

「最初の2シーズンは問題ない。クラブは収益をあげ、そこそこやれるだろう。問題はその後だ。3年から4年居座ったら、もっと金をつぎ込むようになる。プレミアリーグにいるだけでは、ファンが満足しなくなるからだ。彼らはさらに上を求める」

「そうなると、いろんなことが狂いはじめる。経営陣が代わる。監督が代わる。あるいは、中心選手を手放すことになる。気がつけば金が底をつき、選手の大放出が始まる。(プレミアリーグに)残留するために大金を投じても、結果がついてこないかもしれない。だから、私たちは謙虚にやっていかなくてはいけないんだ」

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