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タラゴナ鈴木大輔、1部昇格ならずも「ファンが残れと言ってくれた」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 鈴木は手応えを感じていた。

 しかしオサスナも一筋縄ではないかないチームだった。破産して管財人が管理する状態だが、1部にいた歴史が長く、老練な選手と実力のある若手で混成されていた。来季はボルシア・ドルトムント移籍が決まっているメリーノは、10代にもかかわらず、中盤で圧巻の存在感を見せる。一方、ベテランのデ・ラス・クエバスはサイドに流れて中央の守備を揺さぶる攻撃を繰り返した。

 じわじわと押し返されるナスティック。そのストレスが生んだ隙だったのか。

 前半32分、ナスティックの選手がたまらずメリーノをファウルで止める。その直後、クイックでのリスタートにナスティックのDFラインは一瞬、準備が遅れた。パスを受けた選手へのプレスも間に合わず、クロスを入れられたとき、ゾーンで守るDF陣には綻(ほころ)びができていた。そして鈴木の裏側に飛び込んできた長身DFに、ヘディングを叩き込まれてしまった。

「速いリスタートでプレーを見失って。このレベルで、フリーで上げさせたら厳しいですね。中も揃っていなかったですし。いまさら、の教訓かもしれませんが」

 訥々(とつとつ)と話す鈴木はその瞬間を悔いた。わずかに途切れた集中が、この試合の分岐点だった。その隙を見逃さなかったオサスナは老獪だったということか。

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