安い買い物だったマンU。クラブは金儲けの手段になった (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ユニフォームの広告スポンサーは、世界中の企業がユナイテッドに出資する方法のほんのひとつでしかない。サウジアラビアでユナイテッドの「モバイルフォン・パートナー」になりたい? あるいは世界市場で唯一のオフィシャルな「カー・パートナー」になりたい? グレイザー家はその地位を用意している。

 グレイザー家の努力とフットボールのグローバル化の歩みが、ユナイテッドのビジネスを成長させた。グレイザー家がユナイテッドを買収した2004~05シーズンには、クラブには2億4640万ユーロ(当時のレートで約338億円)の収入があった。コンサルティング会社のデロイトによれば、ヨーロッパではレアル・マドリードに次いで2位だった。しかし昨シーズン、ユナイテッドの収入はその2倍を超える5億1800万ユーロ(約725億円)になっていた(まだレアルに次いで2位だ)。収入は今年、落ちるかもしれないが、来シーズンはクラブの最高記録を更新するだろう。

 その一方で、グレイザー家がユナイテッドにもたらした負債は、ほぼ半分に減っている。最も負債の多かった2009年には7億1700万ポンド(当時のレートで約1050億円)だったが、昨シーズンは3億8050ポンド(約660億円)まで減った。売り上げはもっと多いし、負債にかかる利子が下がっていることもあって、クラブにとっては十分に対応できる額だ。ジャーナリストは10年も前から、ユナイテッドが、あるいはグレイザー家が、あるいはフットボール界そのものが破産の危機にあると言い立ててきた。今となっては、そんな騒ぎがばかばかしく思える。

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