安い買い物だったマンU。クラブは金儲けの手段になった (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 グレイザー家がユナイテッドを7億9000万ポンド(当時のレートで約1580億円)で買収したことは、今では安い買い物だったと言える。この原稿を書いている時点で、ニューヨーク株式市場でのユナイテッドの時価総額は24億8000万ドル(約16億1000万ポンド=約2980億円)に達している。

 それに、グレイザー家がファンに好かれることはないとしても、今ではほとんど無視されるようになった。グーグルの検索ワードで「グレイザー/マンチェスター・ユナイテッド」の組み合わせが最も多かったのは2005年のことだ。2010年に「赤い騎士団」の名で知られる裕福なファンのグループがユナイテッド買収に乗り出したときに再び増えたが、それ以降は落ち着いている。

 そうしたネット上の検索は、イギリスからのものが圧倒的に多い。次に多いのはアメリカだが、数には大きな開きがある。ナヤニが書いているように、イギリス以外にいるユナイテッドのサポーターは、誰がクラブのオーナーであろうと関心がないようだ。

 グレイザー家は静かな勝利をあげた。ナヤニは著書を自分が解雇された話で締めくくっている。この一族にはスポークスマンなど必要ないのだ。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る