なぜミラニスタは本田圭佑にブーイングを浴びせたのか (2ページ目)

  • ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
  • 利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 さて、ここでもう一度、今シーズンのミランを見直してみよう。今のミランは大失敗に終わった昨シーズンから立ち直るべく、新たに一から作り直さなければならなかったチームだ。その大役に選ばれたのは、トップチームを率いた経験はないが、戦術において明確な考えを持ち、ミランというチームの価値とその勝利の歴史を肌で知るフィリッポ・インザーギ。新プロジェクトを開始するにあたり、才能ある重要な選手たちもやってきた。しかし決して良好ではない財政面と、UEFAが決めたファイナンシャル・フェアプレイを考慮に入れる必要があり、金を湯水のように使っての補強はできなかった。

 チームを立て直すには時間と大いなるモチベーションが必要だ。実際、夏のプレシーズンマッチはかなりひどい出来であったが、その間にミランは「自分たちらしいプレイ」と、本物のチームを作るための最も重要な要素のひとつである「闘志」を手に入れた。それが開幕からの好調につながったのだろう。ただ長いシーズンの間には、どうしても好不調の波があり、どうしても結果が出ない時期もある。これはどのチームにも訪れるものである。大切なのはその時期をどのように乗り越えるか、その不調をどのように払拭するか、である。そしてその正念場が今なのだと私は思う。

 サッカーは極上のミステリー映画と同じように、挽回のチャンスが必ず巡ってくる。例えば今度の土曜日の試合がまさにそれだ。対戦相手は今シーズンのダークホースとして注目されつつあるサンプドリア。現在サンプドリアはラツィオと共に、ミランの目標である3位につけている。今ここで、サンプを叩いておけば今後の戦いが楽になることは確かだ。

 さて我らが本田圭佑にとっても、先日のパレルモ戦は忘れてしまいたいような試合だったろう。この日はチーム皆が自分たちの力を十分に発揮できずにいたが、本田もその例に漏れず、同じく右サイドでプレイするアバーテとのコンビネーションがまるで噛み合っていなかった。本田にとっても今が踏ん張りどころだろう。彼には是非、この泥沼からミランを引っ張り出す役をやってもらいたい。

 ミラネッロで見かけた本田は視線をまっすぐ前に向け、まるで進むべき正しい道を探しているかのようだ。彼はきっとどうやってそれを見つけたらいいかを知っているはずだ。とにかく練習、練習、練習......。それ以外に方法はない。



オフィシャル誌編集長のミラン便り>

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