香川真司を歓迎するドルトムント。2年前とここが違う (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 かつてもそして今も、ドルトムントでの香川の愛されぶりは尋常ではない。香川のユニフォームを未だに着用しているファンもいるし、日本人と見るや香川のチャントを歌いだすサポーターが今でもいるのだ。

 今回の移籍に際して、ルール地方の新聞『ルール・ナッハリヒテン』がウェブ上でアンケートを取った。「香川はドルトムントに必要か、2年前の選手(過去の人物)にすぎないか?」というもので、30日の約12時間で回答数は1万9000以上。全体の約92パーセントが前者だと答えている。

 また『ビルト』紙は、移籍市場終盤でバイエルンに加入した元レアル・マドリードのシャビ・アロンソの移籍と比較している。曰く「シャビ・アロンソと香川、どっちが良いかけこみ移籍?」。記事の中に結論は出ていないが、比較対象にされるほど大きな扱いということだ。

 ただし、そんな古巣に復帰するからといって、即スタメンというのは早計だろう。かつての中心選手、MFヌリ・シャヒンはレアル・マドリードとリバプールを経て1年半でドルトムントに復帰したが、安定して活躍し出すまでには半年以上かかった。自信と感覚を取り戻すのは一朝一夕でというわけにはいかないはずだ。

 また現状のドルトムントは、香川が在籍していた頃に比べてよりスピーディになり、ショートカウンターの色を強めている。オーバメヤン、ロイスといった2011~20112シーズンにはいなかったアタッカーが両翼にスピードをもたらす。香川に近いタイプとしては、ミキタリアンが昨季から背番号10を背負ってプレイしている。周りを使うことができ、なおかつ自分で切り込んで得点することもできる選手で、現在のドルトムントの中心だ。

 さらにMFゲッツェとFWレバンドフスキーはバイエルンへと去り、今季からイタリア代表インモービレ、コロンビア代表ラモスが前線でプレイする。各選手が複数のポジションをこなし、システムも4-2-3-1だけでなく、4-1-4-1や4-3-3を併用することから、香川も2列目中央に固執していてはポジションを獲得できなくなる。

 香川が去ったあとの2シーズン、ドルトムントはリーグ優勝から見放されていることもあり、香川をある意味で強かった時代の象徴のように見る向きもあるのかもしれない。日本で報じられるよりも、ドルトムントの歓迎ムードははるかに強い。それだけに結果が求められることは間違いない。一筋縄ではいかないことは本人だって分かっているだろう。それでも前進するための大きな一歩を、香川は踏み出した。

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