無敵の精神力。ブラジル人選手が海外で活躍できる理由

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

小宮良之のブラジル蹴球紀行(7)

 ナタウの空港に到着し、市内へ向かう。毒々しいほど赤茶けた大地と町全体を焼き尽くすような橙(だいだい)色の太陽と雄大で野蛮さを強く匂わせる海。そこは開拓者が入るまで、紛(まご)うことなき野性の大陸だったのだろう。

 大陸の奥は深い。

 開幕以来、サンパウロ、サルバドール、レシフェといくつか都市を廻ったが、どこの町も違った顔をしていた。「ブラジル蹴球紀行」という連載タイトルにもかかわらず、ブラジルという国は、語るにはあまりに広大すぎ、自分の感性と筆力の乏しさに無力さを感じる。

日本の試合でも多くの陽気なブラジル人ファンの姿が日本の試合でも多くの陽気なブラジル人ファンの姿が ただ、ブラジル人という点で言えば、一つ共通しているのは物事の事務処理能力、効率性が著しく低いことだ。空港のカウンター、インフォメーションデスク、ホテルのレセプション、タクシードライバー......何をするのも仕事が遅い。何をどうしたらそれほど時間がかかるのか、移動の毎日だとうんざりする。

 そこで注意深く観察していると、どうやら窓口の人間がその仕事を覚えていない。隣の係や別の人間に聞く。日本のように教育係のような人もいないのだろう。結局は仕事を習得している人が少なく、知っている人のところに群がる......玉突き事故が起きた交通渋滞のような現象が起きてしまうのだ。

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