スキャンダルとベルルスコーニがイタリアサッカーにもたらしたもの (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 こうした「新しさ」はイタリアのフットボール界には珍しい。今でもイタリアの一部のスタジアムでは、爆竹が頭に降ってこないかと心配になる。しかしユベントスのスタンドは、安全が守られていると思える。アニエリが言うように、人はきちんとした環境の中ではきちんと振る舞うものなのだ。

 キックオフ直前に、ユベントスのサポーターが3枚の横断幕を掲げた。そこに描かれていたのは、ユベントスのライバルであるミランとインテルの小さなフットボール選手が、これまでユベントスが獲得した30のスクデットと、すぐに獲得するはずのもうひとつを見上げているという絵柄だった。すばらしい横断幕にスタジアムが沸き返った。イタリア・フットボールのファン文化では最高の瞬間だった。

 ところが試合が始まると、一部のユベントス・ファンが、ミランの黒人MFケビン・プリンス・ボアテングに人種差別的な言葉を浴びせた。試合の内容もイタリアの凋落ぶりを思い知らされるものだった。
(続く)

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