2013.05.30

スキャンダルとベルルスコーニがイタリアサッカーにもたらしたもの

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

セリエA優勝を祝うユベントスのホームスタジアムの観客。掲げられた優勝回数を示す「31」にははく奪された2回を含んでいる(photo by Getty Images)【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】イタリアの落日(2)

 ユベントスの敵は、このクラブのもうひとつの顔に目を向けがちだ。イタリアの代表的なファミリーであるアニエリ家が支えるイタリアの代表的クラブが、さまざまなコネを使って勝利をたぐり寄せていると、ライバルたちは言う。陰謀論が渦巻くイタリアで、この手の批判はけっこう効く。レフェリーがユベントス寄りの判定をしているという疑惑は、国会でもすぐに取り上げられた。しかし、ときに陰謀論は(特にイタリアでは)当たっていることがある。

 2006年、ユベントスのGMだったルチアーノ・モッジが仕事の時間のほとんどを、携帯電話をかけまくってレフェリーの担当試合を「調整」することに使っていたとわかったとき、ライバルたちは「やはりそうか」と思った。「カルチョポリ」の名で知られるこのスキャンダル(イタリアのフットボール界では新しいスキャンダルが起こるたびに名前がつけられる)は、ユベントスの歴史で最大の汚点だ。

 当時のユベントスの絶望感がよく表れている事件がある。ユベントスの元選手でクラブ職員のジャンルカ・ペッソットがロザリオ(※注)を握り締めて、ビルの4階の窓に腰を掛け、そのまま背中から階下のアスファルトに落ちたのだ。幸運にも命に別条はなかった。

(※注)カトリックのお祈りの道具

 イタリアの警察当局は情報をほとんど開示しないので、カルチョポリ・スキャンダルで誰が何をしていたのかという点にははっきりしないことも多い。会長のアンドレア・アニエリに言わせれば、ユベントスがやったことは「八百長工作ではない」。ユベントスが処罰されたのは「非スポーツ的行為」を行なったためであり、「スポーツにおける不正」のためではなかったと、彼は言う。

 僕は「でもモッジは、レフェリーを統括する人たちに電話をかけていたのでは?」と反論した。するとアニエリは言った。「モッジのほかにも、たくさんの人物が電話していたことが後にわかっている」