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リーガで苦戦。CLで敗北。でもレアルはなぜ儲かっているのか? (2ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 そこで、建設業界屈指の実業家として知られるペレスは資金調達のため、金融機関と放送権を持つテレビ会社に、11年分のマーチャンダイジング権、選手肖像権、そしてインターネット事業売上の権利をそれぞれ30%売却。これによってまず、1億1700万ユーロ(約116億4300万円)の資金を手に入れることに成功する。

 さらにペレスは、マドリード中心地に所有していた3万ヘクタールの練習場を自治体に売り、5億ユーロ(約497億5500万円)を調達。これを元手に、クラブが抱えていた負債を完済したうえで、郊外の広大な土地を購入して新しい練習場の建設費に充てたのだった。まだスペインの不動産バブルが弾ける前だったことも幸いしたわけだが、とにかく旧態依然とした体質のクラブでは決して起こりえないような斬新な方法によって、クラブを破綻の危機から救ったことは間違いない。

 そして、ここからご存知の「銀河系軍団」が形成される。フィーゴに続き、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、デビッド・ベッカムと、毎年ひとりずつ大物選手を補強すると、レアル・マドリードは単なるサッカーファンの領域を超え、世界の誰もが知る存在となったのである。もちろん、すべては計算づく。ペレスの真の狙いは、スター選手が集結した無敵チームによってピッチ上の成功を手にすることと同時に、それに連動させてクラブの売り上げ規模を拡大することにあったのだ。

 その戦略は、目論み通りだった。スーパースターが集まったレアル・マドリードの一挙手一投足は、連日メディアを通して世界中の人々に配信。それによって、それまで限られていたファン数が飛躍的に拡大。ヨーロッパ全土から北米、そしてアジア地域にも「レアル・マドリード・ブランド」が浸透し、世界的にファンが急増したことで、グッズ販売は右肩上がりで上昇していった。

 この間、スタジアムの入場者数も増え続けたわけだが、ここでもペレスはある工夫をして売り上げ増を実現させている。まず、年間シートの数を縮小して一般販売分を増やし、それぞれの単価を大幅に値上げしたのだ。クラブにとって、チケット代の値上げはファンから反発を受けるので、なかなか断行できることではない。しかし、クラブのブランディングが成功したことで、「銀河系軍団をひと目見たい」というファンが世界中からスタジアムに押し寄せるわけだから、値上げについて障害はなかった。年間シートにしても、数が減ったことでプレミア感が増し、ここでも不満の声は挙がらなかった。

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