【オランダ】欧州CL&ELで軒並み敗退。オランダのクラブはなぜ弱くなった? (2ページ目)

  • 中田 徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 エールディビジ弱体化の要因は複雑だ。まず今季、ヘーレンフェーンがノルウェーの王者モルデのカウンターに沈みEL予選で敗退したのは、前年度に成功したことによる『犠牲者』と見ることもできる。2011-12シーズンのヘーレンフェーンは、バス・ドスト(昨季オランダリーグ得点王/現ヴォルフスブルク)、ルシアーノ・ナルシン(同アシスト王/現PSV)、ウサマ・アサイディ(現リバプール)という豪華な3トップを擁していた。しかし今夏、3人は揃ってステップアップのために他チームへ移籍。全員ヘーレンフェーンからいなくなってしまったのだ。昨季エールディビジで2位となって名門復活を果たしたフェイエノールトもヘーレンフェーンと同じ問題を抱え、EL予選で敗退している。オランダの全国紙『デ・テレフラーフ』は、「8月の移籍市場が終わってからチームを再構築せざるを得ないオランダのクラブにとって、CLやELは不利」と論じた。

 また、アヤックス、PSV、フェイエノールトという『ビッグ3』を頂点とするヒエラルキーが崩壊したのも、リーグ弱体化を招いている要因と言える。かつてエールディビジの選手には、「まずは『ビッグ3』に移籍して、それからビッグリーグへ」というステップアップの設計図があった。しかし、2008-09シーズンにはAZが、そして翌年の2009-10シーズンにはトゥウェンテがリーグ優勝したことにより、中堅クラブの首脳陣の間で、「うちの選手をアヤックスやPSVに渡したくない」というライバル心が生まれたのである。

 例えば、フローニンゲン→アヤックス→リバプールと理想的なステップアップを果たしたウルグアイ代表FWルイス・アルベルト・スアレスは、フローニンゲン時代に『練習拒否』という強行手段に訴えた結果、ようやくアヤックスに移籍できた経緯があった。またトゥウェンテも、露骨に中心選手を国内クラブに売るのを嫌っている。アヤックスやPSVがエールディビジのスター選手を揃えてCLやELに挑むのは、難しい時代になってしまったのだ。

 さらに、周辺諸国のドイツやベルギーが若手の育成に力を入れ、ユース世代が自国リーグのレベルアップに貢献していることも無関係ではない。2000年のユーロで惨敗した両国がユースの育成システムを見直したことにより、ブンデスリーガ勢は若手の飛躍もあってCLやELで大活躍。ベルギーもエデン・アザール(現チェルシー)を筆頭に、優秀な人材がヨーロッパの舞台で活躍している。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る