【イタリア】これぞ奇跡!? インザーギの驚くべき変貌ぶり

  • 宮崎隆司●取材・文 text by Miyazaki Takashi

"憑(つ)き物が落ちる"とはこのことを言うんだな......と、つい先頃、ミラノ郊外のピッチで、ベンチ前に立つ"その男"を見ながら思った。

 その男とは、かの有名な希代のストライカー、超絶的ナルシシストで知られたFWフィリッポ・インザーギである。こう言っては失礼だが、彼はリフティングがうまくない。ハッキリ言って下手である。しかし、なぜか点は取りまくった。

 たとえば、2006年W杯ドイツ大会前のイタリア代表合宿でのこと。イタリア代表をW杯優勝に導き、バロンドールまで手にするDFファビオ・カンナバーロの裏を取りまくっていたのが他ならぬインザーギだった。

 そしてインザーギは現役時代、その超絶なる唯我独尊ゆえにインタビューのアポを取ること自体が至難を極めたのだが、取材ができたとしても自らのこと以外の質問には一切答えなかった。そんな男が、昨季引退してミラン下部組織の監督になるや、これぞ奇跡!とばかりに変貌。なんと超絶"いい人"になったのである。

 今、監督として17歳前後の少年達を温かく見守り、負けても「次があるさ」と優しく励ます。完全に別人である。試合後の取材にも気さくに応じては、現役時代にはあり得なかった笑顔で「また見においでよ」と記者に語りかける。そんな彼を見ながら、あの希代の点取り屋、眼光鋭き「スーペル・ピッポ」インザーギを、あらためて懐かしく思った。
※スーペル・ピッポ=インザーギの愛称

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る