【イタリア】8歳の少年たちにつきつけられた厳しい現実

  • 宮崎隆司●取材・文 text by Miyazaki Takashi

 イタリアの全国紙『コリエレ・デラ・セーラ』が2012年11月9日付けの社会面で報じたニュースは、サッカーの現場の冷酷な内実を知る者には「またか......」的な感想を抱かせるだけだったが、そうではない人々、とりわけ幼い子を持つ親たちにとっては衝撃的だったに違いない。

 同ニュースはこう伝えている。「(イタリア北部)トリエステのクラブ、サン・ジョバンニの会長、同クラブのサッカースクールに所属していた8歳の子どもたち6人に『解雇』を言い渡す」

 28歳でも18歳でもなく、紛れもなく"8歳"である。しかも、残酷極まりないことに、同通達は『文書』によって子どもたちに郵送されたという。その大半が自分に宛てた手紙を受け取るのが生まれて初めてだったというから、内容を知ったときの子どもたちの心情は察するにあまりある。

 同会長いわく、「指導者数不足という物理的問題」が理由と述べているが、その弁明はいかにも苦しい。なぜなら、多くの指導者たちが職にあぶれている現実が厳然と横たわっているからだ。

 子どもたちのうち、移籍先を決めたひとりを除いた5人は、サッカーをあきらめるという。こうして「かつてのサッカー大国」イタリアはその底辺を自らせばめ、凋落にさらなる拍車をかけていくのだろうか。

 筆者が先日取材したプリマベーラ(18歳以下)の試合で、両チームのスタメン表に並ぶ選手の半数以上が外国籍の選手で占められていた。だが、率直なところ、その事実にもはや自分が驚かないことにあらためて驚いたものだ。グローバリズムなるものは、国家だけでなく、サッカー界の底辺にまで押し寄せてきている。

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る