【高校サッカー】古豪・東京朝鮮高サッカー部の今「個でやるよりかはチームでやる」「目標にしている日本人選手は遠藤航」 (3ページ目)
【日本サッカーにとっても価値】
転じて、日本の話を。
「強さは類似性ではなく、差異の中にある」
同質の集団は停滞するが、異質な者同士がぶつかることで、新たな視点と力が生まれる、という意味だ。1989年に米国で初版が発売となり、世界で3000万部が売れ、20世紀に最も影響を与えたビジネス書とも言われる名著『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)にはそう記されている。
在日コリアンのチームが「日本人に勝つ」として向かってくる時、こちらも自らのアイデンティティに気づく。島国たる日本でそういう経験ができる機会なのだ。
2025年10月19日。東海大高輪台高のグランドには、東京朝鮮高の選手権予選2回戦の対戦相手、大森学園高の大応援団がタッチライン際に集まっていた。
ピッチ上での激しいぶつかり合いに、その応援団が騒然となるシーンもあった。それでも汚い野次が飛ぶことはなかったが、熱くなった選手同士に、審判が自制を促すべく声をかけるシーンがあった。
10番を背負う2年生エースにして、現OB会長の丁明秀(チョン・ミョンス)氏の次男でもある丁昌平(チョン・チャンピョン)が守備に入った際、相手とぶつかり合って、ボールをラインの外に弾き出すことに成功した。
相手応援団には顔を向けないようにして、大きな声で叫び、ガッツポーズをしてみせた。
それ、それだ。父であり、OB会長の父・明秀氏も「息子に吹き込んできたこと」ではないか。スポーツの試合では少々荒っぽいくらいが、むしろ平和なんだろうなとも感じる。
2025年の彼らにとって、本国のイングランドW杯ベスト8も、かつての東京朝鮮高の強さの礎となった旧ユーゴサッカーの知恵も、遠い昔の話だ。
そうであっても、
若い年齢ながらに自分が何者かを強く認識し
誰に応援されているか、認識している
強い気持ちで日本に向かってくる
真剣にこちらが嫌だと思うことを考え、実践してくる
そういうチームが日本国内に存在し続けることが、日本サッカーにとっても価値のあることなのだ。こちらとて時折、違う発想に触れなければ発展が鈍る。そういうことだ。
著者プロフィール
吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)
ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。
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