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【高校サッカー】全国トップクラスの実力を誇った東京朝鮮高の歴史 サッカースタイルのルーツは本国そして旧ユーゴから (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【日本のなかにある違う発想のサッカー】

 近年の日本国内(Jリーグ)のサッカーシーンを説明する、こんな言説がある。

「『王道型』(ボール保持)と『覇道型』(ハイプレス・速攻)のせめぎ合い」(西部謙司氏 『スポーツナビ』2024年2月22日)

 何が言いたいのかというと「似たことをやっているチームが多い」だ。J1からJ3まで、同じような風景が見られる。ハイプレスを回避するためにGKまでボール回しに加わる。相手をうまく剥がし、ボランチにいい態勢でボールが入れば、一気に攻撃が加速――。

 トレンドなのだろう。日本国内では1990年代から似たようなことが起きてきた。「3バック」が流行り、「絶対的4バック」の時代がやってくる。「2トップ」が廃れた後、また見直される時代が来る......というふうに。一気に浸透していって、皆が右へ倣(なら)えとなる。

 しかし、誰かが「違うこと」をやって固定観念をぶっ壊す時がやってくる。自ら考え、そこに取り組まなければ、いつも誰かを模倣する存在で終わってしまう。

 2014年ブラジルW杯のオランダは、グループリーグでスペインと対戦し5-1と大勝した。スペインの最先端の「攻撃時のパスパークを生むコンパクトな距離感が、守備時にはハイプレス網に切り替わる」というストロングポイントを「一気にロングボールを入れることで飛び越えて」克服した。守備では当時、前近代的と言われた3バック(5バック)を敷いて、対応しきったのだ。

 トレンドに倣い、速く普及するのもいいのだが、それは日本にとっての弱点にもなりうる。いささか古いが、名著『日本の思想』を記した政治学者で思想史家の丸山眞男氏が、こんな発言をしている。

「(日本社会は)異質的なものとの対決を通じて自分のものをみがきあげ、きたえていく機会が非常に少なかった(中略)。これからの日本は、それではすまなくなると思うんです」(『丸山眞男教授をかこむ座談会の記録』1968年11月 81-82ページ)

 自分たちとは違う情報・発想から生まれるサッカースタイルが日本国内にあり、そこに接することができる。最近は選手の気質も変わりつつあるとはいえ、今、日本サッカー界に東京朝鮮高サッカー部が存在する価値がそこにある。

 たとえば、神奈川県横浜市にはアルゼンチン人の法人代表が率いる「エスペランサ」という街クラブが存在する。育成世代の試合では、周囲の日本チームよりはるかに高いインテンシティで臨むことで知られ、日本チームとの交流も盛んなのだが、この価値と同じ話だ。

 では、いかにこの東京朝鮮高が日本社会とは違う情報ルート、思想・発想で強いチームを作り上げてきたのか。

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