日産の横浜F・マリノス売却問題をどう見るか 不安があるとすればJリーグ自体の魅力とスタジアム問題か
連載第60回
杉山茂樹の「看過できない」
日産自動車が横浜F・マリノスの運営から手を引き、およそ75%を保有する株式の売却を検討しているとされる件について触れてみたい。
1972年創部の日産自動車サッカー部。横浜F・マリノスは、日産自動車の福利厚生的な側面を持つアマチュアチームとして発足した。1977年に当時の日本サッカーリーグ(JSL)2部、1979年には1部に昇格。1980年代後半から、JSLがJリーグに発展的解消する1992年にかけては、読売クラブと二大クラブを形成した。
1993年にスタートしたJリーグには横浜マリノスとして参入。以来32シーズン、J1の座を維持している。オリジナル10と呼ばれるJリーグ創設期から存在する10チームのなかで、降格を経験していないチームはほかには鹿島アントラーズのみ。つまり、横浜FMはJリーグを代表するクラブのひとつになる。もっとも鹿島は、その前身である住友金属時代、JSLでも2部暮らしが大半を占めた。JSL時代を含めた実績を総合すると、横浜FMこそが日本サッカー界を牽引してきたナンバーワンクラブとなる。
日産が撤退の検討に入ったとされる横浜F・マリノスの本拠地、日産スタジアム photo by Kyodo News これがJSL時代であれば、日産が手を引けば、同時にチームも廃部に追い込まれていただろう。実業団チームの廃部や休部の話は、日本のスポーツ界においてあとを絶たない、よくある話だ。しかし今回はそれとは話が違う。
日産自動車にとっては、その業績悪化があらためてクローズアップされることになった暗いニュースかもしれない。だが、横浜FMにとっては必ずしもそうではない。世の中はどうもそのあたりの整理がついていないように見える。
両者は必ずしも一心同体の関係にはない。横浜FMを運営している横浜マリノス株式会社は、日産がその株の75%を保有しているとはいえ、別の組織だ。昨季の収支報告書によれば866万円の純利益がある。黒字経営は12年連続に及ぶ。債務超過のない健全経営を維持している。
買い手はいると考えるのが自然だ。ニュースでは家電量販大手のノジマが手を挙げたと聞くが、売り手市場にあると言っていいだろう。なんと言っても実績的に文句のない日本のナンバーワンクラブだ。チームのイメージも悪くない。筆者は特に横浜FMのファンというわけではないが、トリコロールのチームカラーにクリーンなイメージを抱いている。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

