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35歳・鈴木大輔が振り返るサッカー人生のターニングポイント スペインでの3年間とジェフ千葉への移籍 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 結果的に、練習参加を経て加入が決まったタラゴナで過ごした3シーズンは「間違いなく、第2のターニングポイントと言いきれる」ほど、濃密な時間になった。スペイン語はおろか、英語もままならないながらも通訳をつけずに過ごし、サッカーはもちろん、生活面もイチから組み立てていく環境は、鈴木に「生きる力」を備えさせ、2枠の外国籍選手の出場枠をつかむための戦いも、新たなサッカー観を植えつけることにつながった。

「僕のことなんて誰も知らないし、言葉も通じないから深い話もできないというなかで、まずはひとりの人間として認めてもらわなければいけないわけですから。その高いハードルを乗り越えようと毎日、必死に戦い続けました。結果的に、根が明るい性格にも助けられて、明るさと笑顔で乗りきることも多かったけど(笑)、タラゴナでの時間があったから、自分がどれだけ恵まれた環境でサッカーをしてきたのかも思い知った。

 正直、スペイン2部のクラブとなれば、環境面も含めて決して恵まれているわけではなかったですけど、何も整っていないから気づけることもたくさんあって、毎日"生きている感"にあふれていました。

 また、サッカーでも......それこそ、近年は日本でも立ち位置がどうとか、相手を見てサッカーをするような戦術も増えましたけど、それをもう何十年も前からやっていたのがスペインだったので。スペインはいつの時代も『バルセロナにどう勝つか』からの逆算で守備戦術が発展していく国なんですけど、それは2部も同じで、常に最新の守備戦術に触れながらプレーできた経験はすごく大きな財産にもなった」

 かつ、チームに必要とされ、試合出場を重ねられた経験も、鈴木にとっては自信につながる出来事だったという。だが一方で、ラ・リーガへのステップアップを視野に入れてクラブからの契約延長の話を断った途端にメンバー外となり、約半年間試合に出られなくなるという苦い経験も味わった。

「タラゴナでのプレーや評価を冷静に分析した時に、試合には出ていたとはいえ、その自分では『違約金を払ってまでラ・リーガのクラブが獲得してくれることはないんじゃないか』と考えていたので。少しでも移籍しやすくなるために契約延長はせず、フリーの身になりたかったんです。

 ただ、タラゴナにしてみれば(チームに)残る気がない選手は使わない、それなら来シーズンもタラゴナとの契約がある選手を使う、と。クラブと関係性が悪くなるとか、嫌な態度を取られるようなことはまったくなかったんですけど、契約社会なので、そこはドライに判断されたんだと思います。それで、残りの半年は自分を磨く時間に使おうと切り替えました」

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