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古巣のヴィッセルに復帰した森岡亮太が引退を決断したわけ 「サッカーが楽しい」という感覚が蘇ってこなかった

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

森岡亮太インタビュー(前編)

引退を決断した理由について語る森岡亮太 写真提供/@株式会社44引退を決断した理由について語る森岡亮太 写真提供/@株式会社44この記事に関連する写真を見る 2010年にプロキャリアをスタートして15年。ヴィッセル神戸の森岡亮太が現役生活にピリオドを打ち、スパイクを脱ぐ。

「子どもの頃に描いた夢は叶えられなかったけど、引退を決めた時に『よう頑張ったな』って思えたってことは、いいサッカー人生やったんかなって思う」

 どんな時も、常に夢から逆算して何をすべきかを考え「その時々の最大値を求めて戦い抜いた」という思いがあるからだろう。清々しいほどに「悔いはない」と言い切った。

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 実のところ『引退』の文字が頭に浮かんだのは、今回が二度目だという。一度目はベルギー・シャルルロワSCでの6シーズン目となる2023-2024シーズン。30歳前後からケガに悩まされてきたなかで、「今の自分にもう夢は追いかけられない」という現実に直面した時だ。

「子どもの頃からの僕の夢、目標は、FCバルセロナでプレーすることでした。高校生の時に繰り返しバルサの試合を観て、あんなふうに観ている人をワクワクさせるサッカーをしたい、自分も彼らと一緒にプレーしたい、と思ったのがきっかけです。

 プロになったばかりの頃は『その夢の設定は高すぎる』と言われたこともあったけど、ずっと一番高い目標から逆算して、自分は何をすべきかを考えてきたし、僕にとっては目標を下げるイコール今、自分がすべきことの目標も下げるってことなので。揺らぎなく『いつかバルサに入る』と描き続けてキャリアを進めてきました。

 でも近年は、ケガが続いて思うようなプレーもできず、試合への出場機会も減っていたなかで、その一番のモチベーションにしてきた目標が完全に消えたというか。それによって、自分は何のためにサッカーをしてるんやろう?って思うようになり、それなら辞めたほうがいいんじゃないかと考えることが増えました」

 それでも、いったんはその2文字を頭からぬぐいさったという。本来のコンディションさえ取り戻せれば、新たなモチベーションでサッカーに向き合えるんじゃないかと思ったからだ。それがプロキャリアをスタートさせた古巣でのプレーとなれば、ここからまたギアを上げられるかもしれないという期待もあった。

「体がよくなった状態で、ここから自分が何をできるかを見たくなったというか。夢はもう実現できないけど、自分のキャリアという大きな枠で考えた時に、育ててもらったヴィッセルという特別な思い入れがあるチームでプレーすれば、別のモチベーションが湧いてくるんじゃないかと思い、帰国を決めました。

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