古巣のヴィッセルに復帰した森岡亮太が引退を決断したわけ 「サッカーが楽しい」という感覚が蘇ってこなかった (3ページ目)
ゆえに、シーズンが終わったあとは自らチームを去ることを決めたという。クラブからは延長のオファーを受け取っていたが、それを受け入れるのはクラブのためにも、自分のためにもならないと考えた。
「古巣に戻っての半年、個人的にはいろんな葛藤もありながら、ヴィッセルの大きな成長、変化を感じ取りながらプレーできて本当に幸せでした。でも、自分のパフォーマンスを振り返った時に、ピッチに立った時間や監督からの信頼を考えると、オファーはあくまでクラブレジェンドとしてのもので、戦力として評価されたものではないのかな、と。
強化の方に直接そう言われたわけではないけど、僕自身はそう感じたからこそ、チームに残るのはヴィッセルのためにも、自分のためにもならない、と思いました。ただ、だからといってすぐに引退だ、という思考にはならなかったこともあり、他の可能性を探ってみることにしました」
そのなかでは、J2のジュビロ磐田への練習参加をきっかけに、いくつかのJ2、J3のクラブから声がかかったと聞く。だが、結果的には磐田への練習参加も契約にはつながらず、かつ、自身もその現状に向き合うなかで、気持ちが徐々に『引退』へと傾いていく。というより、磐田加入の可能性がなくなって、あらためて自身と向き合った際に、見ないようにしてきた"本心"をようやく直視できた。
「ジュビロへの練習参加のあと、他のクラブから声を掛けてもらっても、なぜか自分の気持ちが全然動かなくて。それがなぜなのか、もう一度自分と向き合った時に『ああ、俺は、引退を見ないようにしているだけかもな』と気がついた。
現役続行の可能性を模索するために『引退』に毛布をかけているような感じというか。表現が難しいけど、小さい頃から夢を追いかけて、戦い続けてきた自分がこういう形で現役生活を終わらせようとしていることに責任を持ちたくなくて、見ないようにしているんやと思い至った。
その時に『今の俺はもう、サッカーが好きじゃない』『サッカーを楽しめてない』という事実を、本当の意味で受け入れられたというか。これまで、サッカーが好きで、プレーするのが楽しくて、その姿を観ている人に楽しんでほしい一心で続けてきたのに、今の自分の気持ちはどれにも当てはまらない、と。そんなふうに自分が一番大事にしてきたサッカーへの想いがなくなったのなら、現役を続けるべきじゃない、引退やと思いました。
それを受け入れたら、なんかモヤがかかっていた気持ちがパッーと晴れるのを感じたというか。子どもの頃からエリートでもなかった自分がこうしてプロになれて、日本代表にも選ばれて、ヨーロッパでも長い期間プレーできたことについて、出来すぎなくらい、いいサッカー人生やったなって素直に思えました」
だから、引退だった。
(つづく)◆「バルサでプレーしたい」という夢を追い続けた森岡亮太、サッカー人生における転機>>
森岡亮太(もりおか・りょうた)
1991年4月12日生まれ。京都府出身。久御山高卒業後、ヴィッセル神戸に入団。1年目の2010シーズン、10月にプロデビューを果たす。チームがJ2に降格した2013シーズンから10番を背負う。以降、チームの司令塔として活躍。J1 に復帰した2014シーズンには初めて日本代表にも招集された。2016年にポーランドのシロンスク・ヴロツワフに完全移籍。その後、ベルギーのワースラント=ベフェレン、アンデルレヒト、シャルルロワSCでプレーし、2024シーズン途中に古巣のヴィッセルに復帰。2025年3月、現役引退を発表した。
フォトギャラリーを見る
3 / 3